第千二百四十一話
「お父さん。投げナイフっていう武器がありますよね」
「ああ。あるな」
「あれを、ミニスカートに手を突っ込んで中から取り出すという手法についてどう思いますか?」
「なかなか攻めてるなぁ……」
何かを思い出したかのように秀星に問う椿。
秀星は苦笑する者の、世の中にはいろいろな人がいるので、こだわりに関しては自由である。
「ただ、他のところにしまえないってわけでもなさそうだな。未来でのクラスメイトの話か?」
「そうですね。その人はスカートの中から刀を取り出したりしますよ」
「ミニスカに何の執着が……」
「美少女剣士の嗜みと言ってましたよ」
「……」
最初に投げナイフを例に出したところを考えると、その人はおそらく投げナイフを得意とする戦い方をしていると思われるが、もはや何でもアリである。
「ていうか、投げナイフかぁ」
「む?」
秀星はアトムからいろいろ聞いたが、栞が言うには、椿は沖野宮高校の『特進クラス』というものに所属しているようだ。
通常、一クラス三十人で構成されている沖野宮高校において、十二人しか生徒がいないクラスで、圧倒的な才能の塊である栞に加えて、頭脳だけ、剣術だけに限れば、栞を超えるような生徒も中にはいる。
そんな中で、投げナイフを主武装とする生徒がいるというのがいろいろ思うところではある。
投げナイフだって使い手によるし、秀星だって使い方によってはそんじょそこらの下位神ならフルボッコにできるので、弱いと言いたいわけではない。
ただ、まだ何か隠し持っていそうだとも思う。
「ふむぅ。その人、いろいろおかしいんですよね。水泳の授業の時に、ビキニなのにいつの間にかナイフを十本以上構えていたりするんですよ?」
「なんで水泳の授業でナイフを十本も構えるような状況になったんだ?」
「テンションが高めの人がそこそこいるので、いろいろあるんですよ!まあ、その人もテンション高めですけどね」
「そ、そうか……」
元気なようで何より。
というか、なんだかすごくバランスがおかしいクラスのようにも思えるのだが、やはり椿がいるとそこはどうにかなるのだろうか。
……『やけくそ』という単語が頭から離れないが、きっと気のせいではあるまい。
「いろんな人がいるもんだな」
「むー。そうですね!」
いろんな人、要するに、個性が強い目の人という意味では、椿がぶっちぎっているのは間違いない。
ただ。そんな椿の周りもまた、騒がしいようだ。
それが悪いというつもりはないのだが、担任教師は大丈夫なのだろうか。
そこが少し、心配ではあるけどね。




