第千二百三十七話
「むっふっふ~。私が来たからには会議は白熱しますよ!」
「そんな打ち合わせ不足のようなことに私がさせるわけないだろう……」
ミニスカスーツでサングラスをつけて、アタッシュケースを構えた椿が元気そうにしているが、アトムとしては『なんで許可出しちゃったんだろうなぁ』といった様子だ。
どうやら、椿が『会議に参加したいです!』といって、紆余曲折の末に実現してしまった。みたいな様子だが、確かに、会議において何の役にも立たない椿を何故許可してしまったのか、過去のアトムとしてもかなり謎である。
「そうよ。父さんのことだから、打ち合わせはほぼ終わってるわ。会議っていう体裁だけど、実際は各々が精査した情報の共有みたいなものよ」
「え、そうなんですか!?」
栞が補足を入れると、椿は驚く。
……で、その補足を入れた栞だが、こちらもミニスカスーツである。
完成していると言える美貌とスタイルを誇る栞がこのような格好をしていると、大変大人のエロさが感じられるものになっているが……会議に出席する人たちは大丈夫なのだろうか。
(まあ、どうせ大丈夫にはならないから、あらかじめ重要な項目は全て終わらせているんだが……はぁ)
内心で溜息をつくアトム。
彼はいかなる会議中であっても娘に欲情などしないが、周りの男性が違うことは分かっている。
ここまで完成した美貌を見せられれば手だって止まるだろうし……というか実際に止まるだろう。
それに加えて、魔法省の中でも人気が高い椿が新コスチュームで登場だ。
ミニスカスーツというものには、男性には抗えない魅力がある。それはアトムも理解している。アトムも若いころは……いや、これはいいか。
というわけで、気になりまくるものがものすごく揃っているのだ。
そしてそれを責めるほどアトムも鬼畜ではない。
というわけで、普通にやってたら会議がグダるので、先に重要なことは済ませてある。
椿が暴れまわろうが、まあ問題はないだろうということだ。
というか、あまりにも重要な会議だったらそもそも椿を参加させてないし……。
要するに何が言いたいのかと言うと、アトムがこの会議のためにやった調整が面倒だったということだ。
何年先まで計画してるの?といわれるほどアトムは魔法省としてその力を発揮しているが、要するにこういうタイプの不測の事態は嫌なのだ。
アトムにとって椿は最大の優先順位にいるわけではない。
魔法省として、日本の魔法関連の事情を解決するために動くのであって、椿は二の次だ。
……ただ、日本全体としてはいろいろなパワーバランスがあるので、嫌なことだってねじ込まなければならないのだが。
(まあ、そうだな。悪いのは秀星ということにしておこう)
パワーバランスの頂点である秀星くらいしか、『所為』にできないのがアトムのつらい所。
ただ、今回は椿が原因なので、反論を聞くつもりはないアトムであった。
「ちなみに、そのアタッシュケースには何を入れているんだい?」
「お菓子の詰め合わせですよ!」
魔法省の会議舐めてるでしょ。
とは口にしないアトムは大人である。




