第千二百三十六話
「……椿ちゃん。その格好。どうしたの?」
「ふっふっふ!……魔法省の会議を覗けることになったんですよ!だったら正装が必要ですからね!」
「椿ちゃん学生なのに、なんで制服じゃなくてスーツなの?」
「そっちの方が気分が入りますし、それよりも重要なことがあります!」
「なんなの?」
「こっちの方ができる女って感じがしませんか!むっふー!」
椿はミニスカスーツで興奮していた。
椿は体格がボンッキュッキュッといった感じなので、すらりとした綺麗な足がしっかり見えている状態である。
まあ、普段から沖野宮高校の制服のミニスカートでニーハイなどをつけていないので見せているが、スーツ故の雰囲気というものは出ていた。
「会議に出席するだけならサングラスはいらないと思うよ?」
「こっちの方が風格がありそうですからね!」
「……」
話している風香としては、確かに椿はかわいい。が、椿が言っていることに理解を示せるのかどうかとなればかなり怪しい部分がある。
身長は小さく、胸は大きく、緑がかった黒髪に白いメッシュが入っていて……全身からあふれ出る『アホそう』という雰囲気の全てを兼ね備えているのは、さすがに椿くらいのものだ。
サングラスというのは状況によって変装アイテムとしても使われるが、椿を知る者であれば初見でわかるだろう。
「むっふふ~♪栞もミニスカスーツで来るみたいですよ。私もできるということを証明します!」
「……」
無理だと思うなぁ。というのが風香の正直な感想だ。
というか、身長が十六歳の少女にしては栞は高い方であり、スタイルも抜群で、どこか近づきがたいオーラすら身にまとっているし……なにより、椿と栞を比べると、栞のほうが断然、『姿勢』がいいのだ。
スーツを着ている人間を比べる際にこれは大きな項目である。
「まあ、頑張ってね」
「はい!頑張りますよ!むっは~!」
やっぱり無理だと思う。
そう思う風香であった。
……いや、周りにいる人間のすべてが思うことであった。




