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第千二百三十二話

「栞よりも頭脳レベルが高かったり、剣を使える生徒がいるのか……」


 魔法省の応接室。


 パソコンでプログラムを作っているアトムと、実用書を書いている秀星は話していた。


「総合的に言えば栞が一番上だと俺は思うけど、超部分的に言えば栞を超える人間はいないわけじゃないって感じだろうな」

「ただ、椿があれだけ大はしゃぎしているということは……まあ、多分皆ロリコンなんだろうね」

「違いねえな」


 ロリ枠で言えば確実に刹那も入ってくるだろう。

 ……身長だけで言えば平均よりも低い椿よりも低く、体つきも細いので、他に大柄な人物がいれば小学生にみえなくもないので、そこまで行くとロリータコンプレックスではなくアリスコンプレックスだが。まあ刹那ならいいか。


「ていうか、椿と栞と刹那は未来でチームを組んでるみたいだけど、なんか属性だけ考えたらヤバそうだな」

「その『属性』というのは肩書の部分かな?」

「ああ」

「確かにやばいのは事実だろうね」

「栞は、未来では時島グループは魔法関連の商品を扱う中ではトップを独走してるって話だからなぁ」

「要するに、世界一位の冒険者の娘と、日本の魔法大臣の長女と、魔法関連企業トップの社長令嬢か。確かに肩書だけで見るとエグイな」


 しかもその三人がチームを組んでいるとなれば、ある意味、一挙手一投足がどうなるのかと気になる者だっているだろう。


 三人とも、まだ学生であり、自分で何か重要なことに関わるような立場ではない。


 厳密には栞はすでにアトムの仕事に関わっているだろうが、アトムだってやれることの制限は設けているだろう。


「……というか、ユグドラシル・ストア。未来では抜かれているんだな」

「グリモアに配置した世界樹からいろいろ持ってきてちょっと加工してる程度だからな。二十年もすれば研究だって進んでるから、それまで買いまくっていたほどの需要はないらしい。まあ、それなら値段だって下がるわな。海外にも店舗はあるけど大きくはないから、GDP三位の国である日本で散々暴れまわってる時島グループが上に来るのも別に難しい話じゃないだろ」

「確かに」

「……アトム、時々手が止まってるけど、何をやってんだ?」

「相続税ってあるだろ?あれをどうにか潰せないかとプランを練っているんだが、なかなかうまくいかん」

「相続税?……ああ、なるほど」


 秀星は納得した様子で頷いた。


 簡単に言えば、親から何かを貰う時、その金額に応じて課税されるということなのだが、当然、より素晴らしい物であればあるほど課税額も大きい。


 これが低い場合、金持ちはずっと金持ちであり、『親から引き継いでるだけなのにズルい』みたいな心理になるのは理解できなくもないが……逆に言えば、

『どうせ課税されるんだし、素晴らしい物を作って、維持して、それを後世に残そうなんてばかばかしいことやってられんな』

 となってしまって、日本衰退の原因になる。


 隣国が人口十倍の中でそんな衰退なんてやってる暇はない。


 アトムは嫌いだろうね。


「まあ、頑張れ。俺はそのあたりよくわからんから」

「反対されんだけマシだよ」


 疲れたようになるアトム。

 いろいろ考えている彼だが……理解を得るのもまた難しい様子だ。扱っているものがものなので当然だろう。こればかりは仕方がない。

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