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第千二百三十一話

「んー……ふむ、こっちに来たときよりもかなり強くなっていると思うぞ。清磨に影響されたか?」

「そういうことになるわね!」


 朝森宅。


 秀星は魔法で作った即席の鉄剣を振るって、栞は未来から持ってきた自分専用の剣を振るうという、本気度において圧倒的な差がある模擬戦となっている。


 斬撃の音が何度も響き渡り、お互いに攻め続けているようだが……正直にいって、秀星の方は遊んでいる印象の方が強いだろう。


「剣の速度はかなり上がってるな。んー。ただ、どこか目標みたいなのがしっかり定まってるような感じがするな」

「剣だけの勝負なら、私でも絶対に勝てないクラスメイトがいるわ。そいつを参考にしているだけよ」

「未来の君のクラス、マジで魔境だな……」


 栞からの斬撃を捌きながらも苦笑する秀星。


 栞は成長速度という点においてはかなり低い方ではある。

 だが、『努力せずともできる才能』が体を構成しており、十分頭もいいのだが、どこか戦闘に関する知識、知恵を多く身に着けている様子だ。


 そんな戦闘特化の人物である栞は肉体が人間の限界に到達していると言っていい。

 端正、では表せない完成された美貌と女性らしい体つきという点でも大変魅力的だが、外見からは想像もできないしなやかさなどもあるため、誰に習ったのかは不明だが、剣術も相当なレベルである。


 だが、そんな栞を超えるほどの剣士が未来にはいるらしい。

 しかも、栞のクラスメイトということは、十六歳ということだ。


 頭脳において栞を超える人間がいると椿は言っていたし、一体どうなっているのだろうか。


「不思議そうな顔をしているけれど、私も椿も、『特進クラス』に入っているからそんなことになるのよ」

「特進クラス?」


 現在の沖野宮高校にはない要素である。


「魔法省を父さんが指導した結果、『コミュニケーション能力は低いけど実力がある人間』を発掘する技術が高まったのよ。その結果、思ったよりも優れた子供が多かったわけ」

「そういったやつらを抱えるためってわけね……」

「そうなるわ」


 現在のアトムは、業務を自動化するためのシステム構築のために日々プログラミングにいそしんでいる。その量は膨大で基本忙殺されているわけだ。


 どうやら、未来のアトムは誰かを指導する時間があるようだ。


「そりゃ、なんというか面白いことになってんな。未来の沖野宮高校」


 フフッと微笑む秀星。


「……」


 それに対しては何も言わない栞。

 ただ、秀星をじっと正面から見ている。


 ……どうやら、未来の沖野宮高校に対して、秀星は無関係というわけではないようだ。

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