第千二百三十話
「……椿」
「む?」
「栞ってめっちゃ賢いんだな」
「私もそう思いますよ!」
朝森宅にて、秀星は栞が作ったらしい資料のようなモノを見て驚愕していた。
「何の資料ですか?」
「簡単に言うと、新しい魔法の開発資料だ。アトムに習ったのか、レイアウトは似てるけど……ただ、質という意味でものすごく丁寧に作ってるのがわかる」
「栞は生まれた時から百点しかとったことがないくらい頭がいいですからね!どんな抜き打ちテストでもへっちゃらぷーみたいです」
「だろうなぁ」
成績優秀。を超えて成績完璧といえるだろう。
容姿完成と言える美貌に加えて高い頭脳の持ち主だ。
今から最高難易度の研究室に放り込んでも、一切合切を片付けてあくびでもしながら帰って来るであろうレベル。
(多くの場合、妬みやらなんやらで面倒な子に育つだろうが……まあ、椿がいればそれはないか)
椿にとって、栞が賢いことは事実ではあるが、だからと言ってそれが椿から見る栞の全てではない。
そしてその価値観は全員に対して行われる。
加えて、人の欠点というか、話されると嫌なエピソードというか、そういったものを本人から嫌われない程度に暴露しまくるため、周りの人間も栞に対しては『次元の違い』は感じられるが『人としての違い』は別にそこまで感じていない様子。
……だからこそ、眩しいものを椿に感じるのだろうが、まあそれはそれ。
「すごいなぁ……正直、アトムを部分的に超えてるんじゃないか?」
「可能性はありますね。未来のアトムさんもそんなことを話してましたよ」
「あ、言ってたのか……さすがのアトムも年齢には逆らえんか」
未来のアトムだって四十だ。
……これで加齢を感じさせないとなると、マジで人間をやめてる。
「お父さんは未来でもあんまり今と外見が変わらないですけどね」
秀星は人間をやめている。
「……まあ、それはそれとして、栞にとって楽しいことって、どんなことがあるんだろうなぁ」
「クラスメイトに、栞よりも賢い人がいますよ」
「マジで!?」
「はい!栞がチェスを百回やって全部ぼろ負けしたって言ってました!」
「……」
信じられない。と言えるレベルである。
「予測能力も結構凄いですし、未来予知か!って突っ込みたくなるようなことを平気で言う人ですね」
「そりゃすごいな」
「まあ私のことはよくわかんないみたいですけどね!むふーっ!」
なるほど、未来でも椿は絶好調なわけか。大変よくわかりました。




