第千二百二十六話
「せ……成長の方法は荒削りのような部分もあるが、めちゃくちゃ強いな!」
沖野宮高校のポイントダンジョン。
そこでは、栞が剣を握って、グレイを相手に戦っていた。
すでにグレイは四番目の姿……要するに最終形態である。
……まあ、時折挑んでくる清磨が第四形態でしか戦えないので、めんどくさくなっていきなり最終形態から始める手段を身に着けたが、まあそれはそれとしよう。
なお、ポイントダンジョンではあるが、栞は沖野宮高校の生徒ではないので、彼女が倒してもポイントチケットは得られない。
それはそのまま、『グレイの難易度が栞に対して設定されていない』ということでもある。
とはいえ、最終形態のグレイは清磨に勝てるレベルの実力を有しているので、強者に挑みに行く。という点で考えればグレイに挑むのは間違ったことではないか。
……かなり、栞の方が押しているようだが。
「ちっ、清磨よりも戦いやすいが、基礎的な部分のレベルが違いすぎるな。面倒なことこの上ない」
「まだ喋る余裕がありますか、もう少しギアを上げた方が良いみたいですね」
「えー、まだ全然本気じゃないの?」
「まだ全然いけますよ」
「すでに常人だと視認することが不可能な速度の斬撃を叩き込んでおいてよく言う……」
ラスボスの威厳を示すって、結構大変だ。
そんなことを思いながらも、グレイは栞の剣を防いでいる。
「私の方も、なかなかあなたを崩せませんね……」
「無駄のない動きをする場合、どのように動くのかは決まってくるからな。相手の流派さえつかんでしまえばどうということはない」
「簡単に言いますね!」
「実は簡単じゃないんだよ!もう、なんでこんな面倒な学校のラスボスやってんだ我。いい加減にしろ!」
「私に言われても知りませんよ」
「お前の一回この学校のラスボスやってみたらわかるぞ!思ったより理不尽だからな!」
「あいにく。そんな暇はありません」
「暇があればやってるみたいな言い方だな」
「未来ではバイトでやります」
「何その感覚!」
ラスボスとかやったことあるんだ……。
まあ、アトムの娘だ、勇者か魔王かでいえば断然魔王だろう。
それは分かるのだが……このどうしようもないモヤモヤは一体何なんだろうなぁ。




