第千二百二十三話
「っとと」
「~♪」
「うおっ!」
「~♪」
「こんどはこっちか!」
「~♪」
「なぬ!?」
時島グループ本社の地下。
そこでは、清磨と刹那が模擬戦をしている。
どちらも模擬専用の剣であり、痛みは発生するが傷が発生しないという設計だ。
清磨は剣、刹那は短剣を使っているようだが、清磨が刹那の攻撃を回避する一瞬だけ武器が見えるのだが、それ以外の時は全く武器が見えない。
「……くそっ、なんか何やってんのかわからんな。てか、どこに隠してるんだアレ」
「~♪」
刹那の戦闘スタイルは、基本的にヒットアンドアウェイと言える。
一撃当てたら離れて、一撃当てたら離れて、といったものだ。
ただ、初速が圧倒的であり、フェイントを入れながら隠蔽魔法を使って姿を隠してくるので、なかなか見失いやすい。
マフラーが揺れて、それによって行動の軌跡が判別できている程度だ。
清磨も観察力は高い方だが、相手するのはなかなか苦労する。
「~♪」
マフラーで口元を隠しながら、楽しそうにニコニコしている刹那。
ただ、それゆえに裏側が見えない。
椿は全く隠さず、栞は分かりやすいが一応隠している中、刹那は分かりにくく隠している様子がある。
まあ、その隠しているものに関しても特別悪いことではない様だが。
とにかく、そういう『雰囲気』が刹那にはあって、戦闘スタイルにも表れている。
「くそ。やりずらい」
清磨の戦闘スタイルは、基本的には全能力をスキルで強化して戦う脳筋と言えるもの。
ただ、別に搦め手が出来ないわけでも、されるのが嫌なわけでもないのだが、やはり娘として清磨という男のことをよくわかっているのか、刹那の歩術はなかなか苦手のようだ。
とはいえ、そういうものは見破られるべきではないことが前提であり、刹那にもわかるということは、未来の清磨は詰めが甘いということでもある。
……未来の日本が平和だからそれで十分、と言われればそれまでだし、平和を超えるものはないのでそれでいいのだが。
「おりゃああああ!」
清磨は剣を振るうが、全然当たらない。
「~♪」
刹那は簡単に回避する。
……ただ、刹那も攻撃力と命中力が足りていないのは事実である。
刹那が想定していたよりも勘が鋭いのか。まあ、『少年期』である今と違って、二十年後なら清磨だってそろそろ四十になるという『中年期』なので、ズレがあるのは間違いない。
ただ、真理の到達具合としては未来の方が優れているはずなのでどっこいどっこいだろうが、いずれにしても、刹那にとってはそこがやりにくいようだ。
刹那の戦闘スタイルだと、敵の死角を判断することも必要なので、ただ全力で攻めればいいというわけではない。急所を突くタイプで、元々の攻撃力は低い。
「~♪」
しかし、慣れというものは戦闘において振り回されるものではないが重要なものでもある。
そろそろわかってきたようだ。
「~♪」
少し……ほんの少しだが、『どう料理しよっかな~』といった様子が見えるのは気のせいだろうか。




