第千二百九話
「むむう……むう~」
椿ちゃんはジグソーパズルをしながら唸っていた。
一枚の絵を破片に分割したパズルを解くというシンプルなものであり、端から埋めていって順々にするというのが初心者でも思いつくものだが、椿は一つ手にとっては『?』となって、また別の一つを手にとっては『?』となっている。
……なんだか一生完成しない気がしてきたが、そもそも始めたのだって気まぐれなので、終わるのも気まぐれだろう。
という感想を秀星と風香とセフィアが抱いたあたりで、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「む!」
椿が元気に反応。
満面の笑みを浮かべて、そのまま玄関に歩いていった。
「はーい。どちら様ですか~?」
ドアを開ける椿。
「……あれ?栞と刹那じゃないですか!どうしてこの時間に来てるんですか!?」
「……なんか聞き捨てならないことを言ってるな」
椿の驚きに声が漏れる秀星。
「むふっ!とりあえず入ってください!」
というわけで、椿が二人を中に入れてきたようだ。
椿を先頭に入ってきたわけだが……二人の特徴を簡単に言えば、『可愛らしいマスコット』と『ものすごい美人』といったところか。椿?『アホな小動物』で表現としては十分だろう。
マスコットの方だが、ダークシルバーの髪をポニーテールにして、首にマフラーを巻いて口元を隠しているあどけない表情である。
胸はBくらいだろうか。全体的にちっこいイメージがあり、緊張しているのか、本質的な部分で臆病な部分があるのか、ぴくぴくしているので可愛らしさが上がっている。
椿は十六歳にしては身長は低い方だが、この少女はそれ以上に小さく見える。
美人さんの方だが、マジでルックスとスタイルのレベルが常人の域を超えている。
黒髪ロングという超王道な要素に加えて、翡翠が混じった静かな印象の瞳。女性としてはやや背が高い方。大きすぎないほどの胸部装甲が存在を主張しており、さらに、立ち姿にも隙が無い。
完璧超人。という印象すら感じる少女だ。
「と、時島刹那です。よろしくお願いします」
「頤栞といいます。よろしく」
「時島……」
「頤って……マジかよ」
時島と頤。
椿と距離が近い関係で、この二つの名字から連想される人物は、ほぼ確定と言っていい。
時島清磨と頤核。
二人の娘が、時間を超えてやってきてしまったようだ。
「くんくん……二人ともドッペルくさいですね」
「初めてきいたわ。そんなフレーズ」
まあ、椿はどんな時でも椿だが。




