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第千二百八話

『グレイ :第一形態で普通に勝ててた少年に最終形態まで持っていかれたぞ』


 チャットツールにて。


 時島グループ最大のオンラインゲームで暴れている『最奥の暇人組合』のメンバーが話している。


『ロイゼ :そりゃまたなんとも。秀星あたりが何かやったか?』

『グレイ :何故それを?』

『ロイゼ :お前がラスボスを務めてるのが沖野宮高校のダンジョンってことは分かってるし、ホームページを見たら、秀星と清磨がいたから、多分そのあたりだろって思っただけ』

『グレイ :思ったより推理力が高いな』

『マクラ :違うさ。暇だから時間がたっぷりあって、ふと秀星のことを思い出して調べただけでしょ』

『ロイゼ :その通りだ!』


 これだから暇人どもは……。


『マクラ :しかし、そこまで強くなっていたのか。私は君たち二人には勝てないと推測しているが、二人が比べるとどっちが強いんだろうね』

『ロイゼ :興味ねえな』

『グレイ :ああ、試す意味はない』


 なんてこった。


『マクラ :そこまで簡単に議論を放棄されると困るんだが?』

『ロイゼ :いやでも、本当に興味ねえんだよな。清磨ってやつがどれくらい強いのか知らねえけど、俺たち同士で比べても……』

『グレイ :だな。どちらが強いか考えたとしても、『いや戦えないじゃん』という結論に達するから、どうしようもない』

『マクラ :そ、そうかな?』

『ロイゼ :あと根本的に言うと……グレイもそうだと思うけど、俺たちって多分、本気で戦ったことってないんだよ。だから、お互いに全力なんてわからないから、比べようがないぜ?』

『マクラ :ふむ……そういわれるとそうかもね』


 実際に戦えないのなら、強さの比較に意味はない。


 それだけのことである。

 そして、それを超えるだけの議論の場を、マクロードが用意できるわけではない。


 グレイもロイゼもダンジョンのラスボスであり、根源的には、強さに意味がある。

 それを示す場がない以上、水掛け論にしかならない。


『マクラ :ならいいか』

『ロイゼ :そんなもんさ。まあ、俺たち以外のラスボス属性が何を考えていてもいいし、価値観の違いだから、そこのところは誤解するなよ?』

『マクラ :その分別ができないほど子供ではないよ』

『グレイ :……』

『ロイゼ :……』

『マクラ :なんだその反応は』


 もしや子供だと思われていたのか?


『ロイゼ :まあ、なんていうかな。子どもっぽいというより、大人を名乗るのには無理があるというか……』

『グレイ :子供も大人もどっちも名乗れないが、大人の方が無理そうだから子供っぽいといったところか』

『マクラ :そ、そうか……』


 まあ、全体的に威厳が足りない……というか、椿や高志たちなど、威厳という概念を破壊してくる奴らが多すぎるので、大人としての魅力を発揮できないということもあるか。


 不憫というか、こればかりは椿に遭遇したことを不幸と思うしかない。

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