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第千二百五話

「おりゃ!」

「ふんっ!」


 激突する剣と剣。飛び散る火花。

 斬撃の影響で空間がゆがむのではないかと思うような威力が発揮されており、圧倒的な『威力』を感じさせる。


「……なあ、グレイ。お前って、そんなに強かったのか?」

「最終形態を引っ張り出しておいて何をいうんだ貴様は」


 最終形態。

 人間らしい姿になりつつ、『金』髪を超えて、謎の光沢がある黄金の髪をなびかせつつ、グレイはニヤリと笑って答える。


「正直、今の俺なら普通に勝てると思ってたよ」

「まあ、『今の貴様』なら、『前の我』を完全に超えていただろうな」

「じゃあ、どうして……」

「アップデートに決まっているだろう!」


 元気そうな様子のグレイ。


「面倒な。もうちょっとそのままでいてくれると思っていたんだがな」

「我はラスボスだぞ?しかも、製作者は朝森秀星だ。さすがに、『自分が作ったラスボスが乱獲される』というのは避けたいだろう。だからこその上方修正だ」

「いや、俺をここまで鍛えたのも秀星先輩なんだが?」

「それはそれ、これはこれだ」


 便利な言葉である。


「しかし、真理か……我にもアップデートで搭載されることになったが、なるほど、なかなか面白い概念が詰まっているな」

「……」


 秀星との訓練で力をつけた清磨は、『真理』に近づいたことで強くなっている。


 それに対して対抗するというのであれば、文字通り、グレイも秀星が知る真理を知らなければならない。


 アップデートで追加された要素として存在するのだろう。


「……人が散々苦労して手に入れた物を、アプデで手に入れるとは」

「いうほど苦労しているか?我から見て、講義しかほぼ受けてないだろう」

「それでもわかる部分は多いんだよ」

「なるほど。確かにな!」


 喋りながらではあるが、一応、どちらも剣を振り続けている。


 言い換えればどちらも本気ではなく、まだ余裕があり、相手をどう出し抜けばいいのかということばかりを頭の中で考えている。


 そして、星乃は出入り口付近で空気になっていた。

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