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第千二百四話

「星乃。ダンジョン行こうぜ」

「……わかった」

「……?どうかしたか?」

「いや、なんか、凄く落ち着いたなって」

「最近よく言われるけど……まあ、確かにそうなのかもな」


 秀星の息子である星乃を誘った清磨だが、星乃の『何処かいつもと違う目線』に思うところがあったのか、聞いてみた様子である。


 実際、秀星のもとで鍛錬を積んで、『真理』に近づいてから、清磨は落ち着いていると言える。


 ……まあ、それでも馬鹿らしさは抜けていないのだから、秀星の鍛え方が良いのか、それとも別の要因か。


 いずれにせよ、秀星の遺伝子を引き継いだ星乃から見て、清磨はかなり変わったという感想をいだいたのは、別に不思議なことではない。


「ダンジョンだな。どこに潜るんだ?」


 ダンジョンと言ってもいろいろある。


 数は多いので、連れションにいくような感覚で行くことが可能だが、目的や相性によっては準備だって必要だ。


 ……まあ、誰かを誘うとして、嫌な準備を必要とする場所に行こうとするほど、別に清磨だって常識知らずではないが。


「チケットダンジョンだよ」


 沖野宮高校でセフィコットが運営しているポイントチケットが手に入るダンジョン。

 ただ……。


「……チケットが足りないのか?」

「チケットが目的じゃなくて、倒したい奴がいるからな」

「なるほど」


 そもそも清磨がチケットダンジョンで倒せていないのは、ダンジョンのラスボスであるグレイだけ。


 まあ、ダンジョンマスターというのは基本的に、誰も来なかったら暇な存在なので、遊びに行くのならちょうどいい相手だろう。


 ただ、星乃はグレイに勝てないので、戦力として期待されても困る。


 ……道中の世間話に付き合うくらいなら、普段からなので何も問題はないが。


「最終的にはグレイを倒したいと思ってるけど、まあ、話し相手がいないと、結構長いからな。あのダンジョン」

「わかった。お供するよ」


 変化は大きい。


 これに触れることができれば、いろいろ期待されることも多い星乃も、何かわかるものがあるかもしれない。


 ついていくだけの価値は十分にある。

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