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第千二百一話

「むー。時島グループって、凄い割に全然CMに出てこないですね」

「……椿ちゃんっていつテレビ見てるの?」


 椿がテレビのチャンネルを変えながらつぶやいたが、風香はそれに対して疑問に思ったようだ。


 ……確かに、椿って常にどこかに『うにゃああああ!』と突っ込んでいる印象があり、テレビを見ている印象はない。


 そもそもCMに出てくる、出てこないの判断ができるのだろうか。


「む!私だってテレビは見てますよ!最近はダンジョンの中でも地上の電波を受信できますからね!」

「……そうなんだ」


 ダンジョンでよそ見をしまくっているともいえるのだが、未来でもダンジョンの挑み方については叩き込まれるだろうし、安全マージンを取った上での行動だろう。椿はアホではあるが馬鹿ではない。多分。


「まあでも、CMをテレビ局に売らなかったら出てこないだろ」

「それもそうですね……あれ?時島グループってCM売ってないんですか?」

「必要ないだろ。そもそも、魔石が必要な企業相手の商いだからな。そこまで交渉相手を広げてないみたいだし、別にCMを売って知名度上げようなんて考えてないだろ」

「そんなものですかね?」

「一応は俺が管理してる形式になってる『ユグドラシル・ストア』だってCM売ってないしな」

「あ、確かに全然見ないですね」

「それと同じだ。まあ……CMださなくても利益が出るなら、別に出す必要はないってことだ。あんまり新商品とか多くないし」


 余裕の極みである。


「というか、お父さんってその稼ぎを何に使ってるんですか?」

「八割は税金」

「そんなに払ってるんですか!?」

「アトムが設定した特別税が適用されてこうなってる。まあ、ほぼ俺を狙ったようなものだがな」

「アトムさんってすごいことを設定するんですね」

「創造系統の魔法が使えると、ぶっちゃけ金って税金を払うくらいしかすることないからな」


 お金がたくさんあると、いろいろな高級なものが買えるし、何でも揃えられる。


 ……という段階になってお金を使うから、金持ちが持っているお金だろうと循環するわけだが、秀星にそれは通用しない。


 創造魔法で何でも作れるし、それに制約を課されたとしても、何かを作る素材を末端価格で買って、一般に流通する以上のクオリティで自ら加工できる。


 本当にマジでお金を使うタイミングがないのだ。別にコレクター精神もないし。


「ふむふむ……」

「ちなみに、その税金だが、ほとんどは特別税で、全て魔法省の予算になるからな。そりゃ、公共投資を遠慮しないよって話だ」


 秀星の価値観とスケールだと、一般基準ではわけのわからないことになる。


 要するにそういうことだ。


「むう……あ、清磨さんって、日本で考えると多分五番目くらいに強いですよね。いずれはお父さんと同じくらい税金を払うようになるんですか?」

「いや、ほぼ俺を狙ったものだから。どれほど清磨がはっちゃけようとそこまでは至らんだろ」


 そもそものレベルが違う。


『アトム :ねえ、お金使わないよね。課税していい?』

『秀星  :いいぞ』


 こんなレベルだ。どんな奴だって理不尽な課税には断固反対だろうが、秀星はマジで金にすら執着がない。


「さすがに清磨さんもそこまでは無理ですね」

「そういうことだ」


 まあ、そんな状態だから、秀星が後ろにいると判断した場合、敵側がビビるわけなんだけどね。

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