第千二百話
「朝森秀星という男に気に入られるとこうなる。というのが数字に出ていますね」
「?」
時島グループの会長室。
そこでタブレットを見ながら、敦美は呟いた。
「簡単に言うと、交渉相手のみなさんが、調子に乗ることが減りました」
「まあ、秀星先輩に無謀な挑戦をして散ったやつって多いもんな」
要するに、時島グループに入ってくる利益のパイが多くなったということだ。
「朝森秀星の怒りを買いたくないものは当然多いですが、逆鱗がイマイチ分かりにくいですからね」
「まあ、秀星先輩って、逆鱗がどうのっていうより、単に弱い者いじめが好きって印象があるんだが」
「私もそう思いますが、まあそれで納得しろというのは無理な話でしょうし……きっとこのまま大して変わりませんよ」
「だよなぁ」
そして、その朝森秀星勢力圏と呼べるものの中に、清磨が含まれた。
もとから秀星の腐臭が漂っていたのに、それがはっきりしたのだから、嫌がらせの極みのような話である。
「どれ位利益が増えたんだ?」
「一週間で三割は増えましたね」
「すげえな」
基本的に、時島グループは清磨がスキルで質を高めた魔石を売ることで利益を得ている。
その際の取引の金額が3割上がったということだ。
ビビリすぎだが、秀星が相手と考えれば、仕方がない。
強者の虎の尾なんて踏みたくないのだ。
「俺自身も強くなったけど……」
「あまり関係ないですね」
「そうなの!?」
「いじめ方がよくわかっていない人間なんて誰も怖くありませんよ」
「……さいですか」
虎の威を借る狐。というわけではないが、秀星の後光のようなものが強すぎるといったところか。
……まあ、こればかりは秀星が強すぎるというだけの話だ。これからも精進しなさい。




