第千百九十八話
沖野宮高校のグラウンド。
魔戦士学校の生徒は基本的に身体能力が高すぎてスポーツ系の部活が存在しないため、かなりつかわれていないことが多い。
そんな場所であり、いつ見てもそこまでめぼしいものは行われていないのだが、今は……。
「おりゃ!」
「ほっ」
清磨と秀星が模擬戦を行っていた。
ただし、清磨は今のところ彼が使える中で一番強力な業物だが、秀星が使っているのは、魔法で適当に作った剣である。
そんなもので攻撃しあっている状態だが、やはりというか、秀星は清磨を軽くあしらっているような状態だった。
「……うーん。まだちょっと無駄があるなぁ」
「いや、どういうレベルの話をしてるんだ?」
「コンマ一ミリ単位だ」
「戦闘中にんなもん矯正できるか!」
「俺はやってるぞ」
「アンタ基準で考えんな!」
斬撃音がやたらうるさいが、二人の声はよく通る。
魔法か何かで声が通りやすくなっているのは確定。
そんな状態で、秀星は清磨に対して指摘しまくっていた。
「言っておくけど、まだそれでも軽い方だぞ。ちょっと厳しい目で見ると、まだまだ調整しなければいけないこと何てたくさんある」
「一ミリ単位の矯正なんて、カメラで分かるわけねえだろ!」
「盲点だった」
確かに、カメラに写っているのをどれほど確認したとしても、コンマ一ミリの差などわかるわけがない。
秀星の場合は感覚神経が鋭すぎて、それを自分で自覚できるのだが、まだその領域に一歩踏み込んだ程度である清磨では、自分でそれを自覚することはできないし、カメラを使って調節するということも不可能だ。
「機材の問題か……これ以上、変な隙があると面倒だからなぁ」
「純粋な化け物の先輩に言われても、なんか納得いかねえんだが?」
「それは納得するが、だからといって、お前を鍛えないわけにはいかないからな。ほら、ギア上げるぞ」
「うおっ!ちょっ!まっ!」
グラウンドで響き渡る斬撃音。
名物、というほどではないが、少なくはない影響を与える見世物にはなっていた。




