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第千百九十七話

「清磨さん。なんだかとても強くなってる気がします!」


 椿が時島グループの本社で元気そうにしていた。


「……具体的にどれくらいだ?」


 食堂でカツ丼を食べていた清磨だが、一応気になった様子。


「そうですねー……よくわかんないですね!」


 知ってた。


 とはいうものの、どれくらい強くなったのかなど、外見だけで分かるものではない。

 立ち姿をみて、『矯正』が感じられて姿勢が良く、それによって隙がないとか、そういう点ならいくらでもいえることはある。


 だが、戦闘力という点でどこまで強くなったのかとなると、そりゃ分からない者の方が多いだろう。


 ……もっとも、そういう戦闘力の判断という部分においても、常人をはるかに超える観察力を持つ椿が分からないのかとなれば、疑問しかないのだが。


「あと、なんだか落ち着いてきてますね!」

「椿に言われるとなんだかなぁ……」


 産まれた時代は違えど、年齢は二人とも同じである。


 ただ、元々の精神年齢が高校生に適していないので、『椿に言われるとなぁ』となる部分があるのだ。


 もっとも、それ自体、いつものことではある。


「お父さんと鍛えたって言ってましたね」

「ああ。ダンジョンの奥深くに放り込まれたよ。ていうか、モンスターたちが、俺の後ろで控えてた先輩にビビってるっていうのがほとんどだったけどな」


 でしょうね。公認の世界一位の男だからな。そりゃ戦いたくなんてないよ。


「ただ、どこまで強くなっても。先輩には勝てる気がしねえんだよなぁ」

「そうですねー。大体、今の清磨さんはお母さんくらいの強さですかね?『神器抜き』で」

「それって今の風香先輩には勝てないってことじゃないか……」

「お母さんもめっちゃ強いですからね!ただ、神器抜きのお母さんに匹敵するって、相当だと思いますよ?」

「そもそも風香先輩って日本で考えるとどれくらいの順位なんだろうな」

「むうう……多分……日本だと5番目くらいじゃないですかね?」

「1位は秀星先輩で、2位はアトムだろ?3と4は?」

「おじいちゃんと来夏さんですね」

「納得いかねえ……」


 いや、まあ、確かに、強いよ?あの二人。


 でもさ、受け入れられるものと、そうでないものがあるのさ。


 ……清磨も、高志や来夏に勝てるかって言われると、そのビジョンは見えないんだけどね。

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