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第千百九十二話

 ネットゲーム界隈で、とある話が表に出てくるときがある。


 圧倒的な反応速度とゲームセンスと課金額を誇り、まさに『娯楽の極めている』とばかりのプレイングを続ける猛者たちが集まる場所だ。


 時島グループが開発した最も大きなオンラインゲームの中で、最強のチームとされている。


 いつ見ても入っているほどのプレイ時間であり、本業などは一切不明。


 ただ、時々、全員が急にその手を止める時があり、まあなんとも不可思議な現象なので『発作持ちなのでは?』といわれることもある。






 ……いや、別に引っ張るほどの物でもない。


 ぶっちゃけてしまえば、あのラスボスたちのことだ。


 彼らはなんだかんだと親近感があるのか、チームを組んでしまったわけである。


 チーム名は『最奥の暇人組合』……略すると『最暇組(さいひまぐみ)』である。試しに口に出してみると思ったほど語呂が悪くないところに問題があると、メンバーである三人も思っているほどだ。


『マクラ :はぁ、ロイゼも大人げないねぇ。別に倒す必要もなかったんだし、譲ってくれればいいじゃん』

『ロイゼ :あほか。友人だからって渡してたらダンジョンの意味がねえだろ。埋蔵金入れてる宝物庫じゃねえんだから』

『グレイ :リアルで何かあったようだが、ここではその話は置いておけ。我が仲間外れになるからな!

『ロイゼ :ゲンキ君は黙ってて』

『グレイ :何故それを!……あっ!アイツらゲロったな!』


 というわけで、グレイとロイゼとマクラ……マクロードの三人は、チャットで話していた。


 ちなみに、『最奥の暇人組合』の専用会員サイトを作って、その中で会話している。さすがに時島グループが運営しているゲームのチャットでこんなバカなことは話しません。


『グレイ :我はそんなことよりも、突っ込みたいところがある!』

『ロイゼ :なんかあったっけ?』

『グレイ :最近の期間限定イベントのラスボスがポンコツ設定になっているということだ!』

『マクラ :最近、イベントのストーリー構成の人が同じって話じゃなかった?そうなることもあるでしょ』

『グレイ :お前らラスボス討伐後のエンディングクレジット見てないだろ!ストーリーの『原案』が須郷敦美になってたぞ!』

『ロイゼ :あの女か!マジで!』

『マクラ :何か恨みでもあるのか!?』


 別に恨みはないと思うが……。


『グレイ :我が思っていたよりも、我らを面倒だと思っているということは間違いない』

『マクラ :一体ww何が原因なんだWWW』

『ロイゼ :楽しそうだな……』

『グレイ :元凶というか、根本はお前か』

『マクラ :いや、時系列を考えれば最初は君でしょ。グレイ』

『グレイ :否定できんなwww』

『ロイゼ :性格悪いなお前ら!』

『マクラ :秀星の方が悪い!』

『ロイゼ :本名出すなよ』

『グレイ :まあ、誰にも見られてないから大丈夫と思うが』

『マクラ :いや、魔法次官あたりが気づく可能性も……』

『ロイゼ :馬鹿!フラグ立ててんじゃねえよ!』


 あの才能の塊を相手にすると面倒なことこの上ないからな。主に戦闘以外の部分で。


『マクラ :……一度、話題をリセットしよう』

『ロイゼ :だな』

『グレイ :ではどうする?』


 大きな力を持っていながらも、警戒心だけは研ぎ澄ませる必要がある。


 それができなければ、ラスボスの看板は維持できない。


 おそらく三人は……どうでもいい時だけ失敗して、肝心な時に失敗しなかったのだ。それだけだろう。

 これからは分からないが、それはこれからわかることだ。

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