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第千百八十八話

 ボスの剣士とプレシャスで斬り合う秀星。


 秀星が指摘した『本気の剣を出せ』という指摘。


 これに乗ったボスが抜いた剣は、装飾こそシンプルなものだが、実用性は相当高いもの。


 プレシャスとまともに打ち合える剣であり、その強度はなかなかのモノ。


「ふう、最近はカードダンジョンにばかり潜っていて張り合いがなかったが、やっぱりこういうダンジョンは良いねぇ」

「随分余裕だな!」


 お互いに超高速で剣を振っており、斬撃音が短機関銃(サブマシンガン)のような速度で鳴り響く。


「め……めっちゃ早いですね!」

「何やら話しているようですが、斬撃音がうるさすぎて何を言っているのかよくわかりませんね」

「敦美ちゃん。雰囲気で聞こう。それで大体わかるよ」

「まあ、それもそうなんですが……」


 速度だけで言えば、全力でやれば清磨だって可能だ。アトムは普通にやるだろう。風香だってやる分には問題ない。


 だが、それらをする際に余裕があるかどうかとなれば、アトムだけに絞られるだろう。


 要するに、絶対的なほどの『才能』に溢れた人間でなければたどり着けない領域。ということなのだ。


(いったい、このダンジョンの奥には何があるというのでしょうね……)


 文字通り、世界一位の男であり、そして『真理』に近い秀星ならば、何があったとしても。別ルートを自分で編み出して再現するだろう。


 秀星は必要だからと言って、それを取りに行くようなことはしないのだ。


 そのため、他の誰かにわたってほしくない時だけ、それを手に入れて他者の獲得を阻止する。

 このタイミングであれば、マクロード・シャングリラという男が狙っているアイテムともいえるだろう。


 正直にいって、他のことはほとんど『些事』といえるほどの実力がある。


「おりゃあああああああああ!」

「ほっほー。良い太刀筋だ」


 ボスが吠えて、剣を振るう。


 それだけで、空間が揺れ、ひび割れるのではないかと思うほどの圧力がある。


 いや、実際、秀星が『遊び』としては満足そうな笑みを浮かべているということは、それだけの次元だ。


 文字通り、空間に亀裂を入れる程度なら、起こり得ても不思議ではない。


 だが、秀星はそれら全ての衝撃を捌いて、ほぼ力のない状態にしている。


 いや、受け流すのではなく自分の体で受け止めている部分もあるが……そもそも、敵の攻撃の衝撃を自分の体だけで受け止めるなどということをするアホは秀星くらいだろう。普通なら体がバラバラになる。


「すごいですううう~~~っ!むふううう~~~っ!」


 ……興奮している椿にとってはどうでもいい話か。

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