第千百八十三話
「……あれ?お父さんとお母さん!?」
椿は回り道をどんとこどんとこ進んでいた。
敦美は無表情の時間が長くなっているのだが、秀星と風香がいたのでちょっと驚いている。
「椿。ここに来てたのか」
「そうですよ!カードダンジョンの攻略は魔法省から推奨されてますからね。むふー!」
椿は刀を鞘に納めると、そのまま風香に向かって突撃!
風香も納刀して、椿を受け止める。
「えへへ~。お母さんの体柔らかいです~」
基本的にスキンシップというか、抱き着くくらいが普通の椿。
ダンジョンの中では基本的に武器を納めることはほぼない椿だが、秀星が傍にいるときは別である。
世界一位の男であり、ありとあらゆる感知能力が高いので、傍でイチャイチャしていても問題はない。
「……敦美。子守りお疲れ」
「まさか、こんなタイミングで遭遇するとは」
「回り道と近道で、定期的に切り替えられる交差点があるから、そこで引っかかったんだろうね」
「私もそう思います」
回り道を一度選べば、そこから先がすべて回り道になるというわけではない。
定期的に切り替えることができるタイミングが存在するようだ。
「しかし、ここから一緒に行けますかね?近道のモンスターは、このあたりになってくると相当な強さですよ?」
「!?……お父さんとお母さんと一緒に行けないなんて嫌ですううう~~~っ!」
「はははっ……まあ、俺がいるから問題ないさ」
「そ、そうだね。秀星君がいれば、椿ちゃんが勝手にいろいろやってても問題ないし」
「……そうですか」
子守りがきつかった様子の敦美だが、秀星が相手だとね。
「はぁ、子守りを引き継いで良いのなら、私は帰りたいんですけどね」
「!?……敦美さんも一緒に行くんですよ!にゃふうううっ!うにゃあああっ!」
興奮の椿。
一応、勘は鋭いので、『本当にやばくなった時』はあまり主張しないのだが、そうではない場合、自分の主張を全面的に押しつけてきます。
「……仕方がないですね。後で本社で興奮されたら目も当てられませんし……」
「むふううう!」
歓喜の椿。
……いや、興奮も歓喜もあんまり変わらないか。
(疲れる。両親がいても私がオマケにならないとは……)




