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第千百八十二話

「面倒なことになりました」

「?」

「道がさっぱりわからないです!」

「……」


 タブレットに自動更新のマップアプリを起動続けている敦美は、椿のそんな様子をみてどう反応するべきなのかを迷った。


「帰り道が全く分からないですううう~~~っ!セフィコットさんは知ってますかね?」


 セフィコットもタブレットを取り出して、『もちろん!』と表示させた。


「むふ~!わかりました!なら問題ないですね!どんどん進みますよ!」

「……………………………………」


 嬉しそうに宣言する椿に対してとても疲れた敦美だが、これが椿の基本なので気にしても話が進まない。


「むっふ~!」


 そして走り出す椿。


 セフィコットも足をシャカシャカ動かしつつついていく。


「……そっちは来た道を戻っていますよ?」

「えっ!?そうなんですか!?」


 椿が驚いた様子で敦美の方を見た。


 ……で、何故かセフィコットも驚いたような様子だが……こっちは演技だろう。


「むうう!ダンジョンってずっと同じ景色でよくわからないんですよ!」

「……」


 例えば、時々用意されている安全エリアに入ったとする。


 大体、『部屋』であり、部屋のインテリア的にすぐに分かるようになっているため入るわけだが、椿はどういう方向で入ってきたのか覚えてないので、たまに安全エリアから出た時に逆走するのだ。


 ここまでくると病気である。


 敦美が『安全エリアに入った時、出入り口に、進む方向に対して何か目印になる物を置いておけばいいのでは?』と改善策を示したところ、椿は『ぱあああっ!』と顔を輝かせたので、敦美もそれ以上のことを言うのは止めることにしたが。


「敦美さんはわかりますか?私は全然わかんないですよ!むー!」

「……」


 そもそもの話をすれば、敦美は自動更新のマップアプリを使っている。

 当然、現在地を示す機能もついているわけだ。


「マップアプリを使っていますからね」

「え!?そうだったんですか!?」

「はい」


 驚愕している様子の椿。


(はぁ、時代はデジタルなのに、なんでアホに限ってアナログなんでしょうね)


 というか、椿は二十年後出身の人間である。


 デジタルの進歩は圧倒的であり、デジタル技術に対する適正がなければ生きていけない。


 ……いや、逆に言えば、進歩しすぎていて、現代の電子技術と合わないということも考えられるか。

 敦美だって、『二十年前の電子アイテムを使ってください』と言われたら、『無理。ていうかそもそもあったっけ?』となるくらいだ。


「むうう!未来のお父さんから『二十年前の電子技術対応マニュアル』を貰いましたけど、よくわかんないですよね!」


 なるほど、椿本体がポンコツだっただけか。いつも通りで安心した。


「なら、私がいれば迷いませんから、サクサク進みましょう」

「わかりました!」


 ……不安だ。

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