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第千百七十九話

「むー。お父さんとお母さんがこれから楽しいことを始めそうな気がします!」

「……」


 時島グループの本社ビルの屋上。

 敦美は困った。


 脈略欠如は椿に関して言えば何も珍しくはないのだが、だからと言ってそのすべてを許容できるかと言われればそんなわけがない。


 というより……どこか、椿に対してとくになにも考えずに行動するのが一般的な付き合い方というものだが、そんな中でも、敦美は椿を相手にしても思考速度が低下しない。


 ただ、こちらも思考停止して接するのが普通の椿を相手にまともに考えて反応しようとすると、多くの場合は『コイツは何を言ってるんだ?』となるため、敦美は頭痛が痛くなるのだ。誤用ではない。


「なんでわかるんですか?」

「何となくです!」


 まあ、確かに最初に『気がします』といっているので、何となくなのは間違いないだろう。


 なら逆に、その『気がする』という段階のものをなぜこうも自信満々に言えるのかということが気になるのだ。


「椿さん」

「む?」

「しっかり考えて喋っていますか?」

「失礼な!私だっていろいろ考えていますよ!」

「ではどういう事を考えていましたか?」

「むー……テヘッ☆」


 コテンッ。と拳を額に当てて、ウインク。


 敦美のアイアンクローが炸裂した。


「ぎゃああああああ!痛いですううううう!」

「ふざけないでもらえませんか?何度も言っていますが、私は忙しいんです。あなたのようにマイペースに過ごせる時間は少ないんですよ。ちゃんと考えて喋ってください」


 パッと放して開放。


 椿は『おおおおぉぉぉ……』と頭を押さえて悶絶しているが、すぐに治ったようだ。


「むふうう~!そんなの無理に決まってるじゃないですか!」

「自覚があるんですか?」

「私は馬鹿ですからね!ふっふーん!」


 腰に手を当てて胸を張る椿。


 ……ダメだこりゃ。


「……で、朝森秀星と八代風香が『楽しそうなこと』を計画していると?」

「はい!私だって混ざりたいくらい楽しいことですよ」

「要するに私にとっては面倒なことという意味ですね」

「ひどいですううう~~~っ!」


 敦美はため息交じりに言うと、椿はよく反応する。


 ……敦美も敦美で、椿を遊んでいるような……当然の権利か。うん。

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