第千百七十八話
とあるダンジョンを進む秀星と風香。
秀星は星王剣プレシャスを、風香は、神祖が作ったという神器、『世界旋風刀・無双荒神』という二刀の刀を装備している。
星王剣プレシャスは、下位神が作成した神器であり、『コア』が同じであるのならば、制限的に『無双荒神』の方が性能は断然上のはず。
しかし、ダンジョンを進む二人の疲労の蓄積具合や表情のゆとり。
さらに言えば……秀星を前に、風香を後ろにして進むという配置は、神器の『格』はともかくとして、秀星の方を上位とする進み方である。
「モンスター。強くなってきたね」
「俺からすれば大して変わらんけど、まあ、そうだな」
「まだまだ神器の力を使いこなせてないか。というより、秀星君の神器って下位神の神器だよね。なんでそんなに戦闘力が高いの?」
「今更な質問に聞こえなくもないが……まあ単純に言えば、俺の方が『真理』に近いからだ」
「毎回言われるけど、あんまり答えになってないような?」
「知っているって言うのはそれだけの強さを生むってことだよ」
「それも知ってるけどねぇ……」
強さ。という点において、いろいろ風香には思うところが出てきた。といったところなのかもしれない。
確かに、盤面をひっくり返すような『知識』というものは、この世の中には数多く存在するものだろう。
だが、それだけで世界をどうにかするほどの力を持っているというのも、逆に実感の湧かない話だ。
「……まあ、風香も考えるってことをやり始めればわかるさ」
「私にはノウハウも時間も足りないよ……」
秀星の場合、異世界に五年いて、しかも集中力とマルチタスク能力を引き上げるアルテマセンスの影響があり、五年とは言うが、実際にはそれ以上の時間を作り出して研究している。
少し前から始めた風香では、まだまだだろう。
「とはいっても、まだまだ風香がその神器を使いこなせてないって言うのは事実だし、そっちから頑張っていくしかないだろ。今のところ」
「うーん……それもそうだね」
近道はある。
しかし、誰にも見えないように、巧妙に隠されている。
それに気が付くのは、一体どれくらい先なのやら。




