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第千百七十一話

 お菓子の国では常に興奮状態だった椿だが、他のダンジョンに挑んでいる間はさすがにそのようなことはない。


 未来でもダンジョンで活動するにあたって教育を受けており、いろいろな意味で『染みついている』のだ。


 そのため、お菓子が大量に出てくるという、冷静になってくるとよくわからないような状態であったお菓子の国は、椿の何かを強烈に刺激してしまったが、椿は他のダンジョンに潜る時は真面目……というより『普通』である。


「とりゃあああ!うりゃああああ!」


 ……いや、ここまで元気よく体力を使いまくっていて、最後までそれが続くというのは普通ではないのだが、これが椿が椿であるための一つの要素だったりするので、突っ込むのは野暮か。


「カードダンジョン多すぎるですううう~~~っ!」


 うにゃあああっ!と吠える椿。


 その手には大量のカードが握られており、多くのボスを叩き潰してきたことが分かるが、どうやら……まあ簡単に言えば、飽きてきたようだ。


 新しいダンジョンに行くということに対して椿は特にストレスを感じることはない。


 ただ……。


「あんまり育ってないダンジョン。最初の方は全部レンガじゃないですか!変わり映えがしないんですよ。うにゃあああ!」


 カードダンジョンは、『世界観』が求められる。


 そのため、『強化しようと思えば、そのダンジョンの世界観に適した内装やモンスター、宝箱を設置する』必要がある。


 ただ、どうやらその『世界観』というのも、ダンジョンにとって『中級以上』の話のようだ。


 出来上がったばかりで『誰からも発見されていない』となると、そのダンジョンはポイントを稼げていないわけなので、当然『初級』であり、レンガで作られたダンジョンとなる。


 これでは全く面白くない。


 面白くないことを続けているとストレスになる。


 椿はローラー作戦が好きではないのだ。刺激が多い方が好きなのである。


「何故私に言うのですか?」

「敦美さんしか言う相手がいないからですよ。だって他の人に言っても『ふーん』で終わりじゃないですか!」

「そのあたりのこと、わかってるんですね。感心しました」

「私のことをなんだと思ってるんですか!むふー!」


 まあ、ようするに、その……欲求不満なのだな。ということを理解した敦美。


 まだ他の面子に時間ができないし、子守りは続ける必要がある。


(……私にどうしろと?)


 まあ、だからと言って敦美がすべてを解決できるだなんて都合のいいことはないんだけどね。

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