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第千百六十八話

「敦美さーん。ゴーヤドラゴン味のアイスクリームがおいしくないですううう~~~」

「おいしい気配がしませんが?」


 お菓子の国で手に入れた『ハイパーお菓子メーカー』


 これを使えば、椿のようなアホでもお菓子を作ることができる。


 で、それを使ってアイスクリームを作ったようだが、そもそもなんでゴーヤを入れてしまうのだろうか。


 ……いや、ゴーヤを入れたことが悪いというより、ゴーヤを入れた後のことを想定できないというのがどういうことなのかと突っ込みたいのだ。


 アホでもお菓子を作れるが、まあ、本当に使い手によるといったところか。


「……ちょっと食べてもいいですか?」

「いいですよ!」


 というわけで、敦美もパクリ。


「……ほぼゴーヤですね。苦いだけです」

「敦美さんって表情が変わりませんよね」

「私だって変わりますよ」


 主にアホな奴のアホさが露呈した時だ。椿とか清磨とかそのあたりの。


「そ、そうですか……あの、このアイスを改善する方法ってありますか?」

「普通に糖分の高い果実を使いましょう。追求するだけ無駄です」

「むううう~~~!」


 唸る椿。


 だが、敦美の表情は変わらない。


 というか、よくよく考えてみると敦美の反応は当然なのだ。


 だって……ゴーヤアイスがおいしくなるまで試食し続けるとか、どう考えても地獄に決まっているのである。


「敦美さんは新しい味への追及心はないんですか!」

「ありません」

「即答ですぅ……」


 敦美は椿に対しても一歩も引きません。


 だって、椿を相手に思考停止して向かっても、良いことなんて何一つないからだ。


 そのまま雰囲気に流されてわけのわからないことを一緒にやる羽目になる。


 敦美はそこまで暇ではないし、アトムほど時間を作る能力があるわけでもないのだ。


「なら、私は私で挑戦してみます!」

(勝手にどうぞ)


 内心で疲れつつ、椿の子守りは大変だと今更ながら思う敦美であった。

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