第千百六十六話
「とりゃああああ!うりゃああああ!そりゃああああ!」
椿が叫びながら刀を振り回すと、そのたびに爆風が発生して、お菓子のタワーがバラバラになっていく。
(倒壊したらどうするつもりなんでしょうね)
そんなことかんがえてるわけないでしょ。
「ふーっ!ふーっ!ええええいっ!」
とにかく破壊しまくる椿。
破壊によってアドレナリンが出まくりなのだろうか。止まる気配がない。
「椿さん。別にお菓子の壁を破壊する必要はないんですよ?タワーなので、上に上るだけですから」
「え、そうなんですか?」
気が付いてなかったのかこの子。
いや、これが単なるフリならまだ性格が悪いですむのだが、椿の場合は本当にわかっていない場合がある。
「未来ではタワー型のダンジョンに潜らないのですか?」
「むー……ほとんどが下に潜るタイプですね」
「……いえ、そもそもタワー型である以上、壁を破壊する必要はないのでは?」
「それだと『だるまおとし』もどきが出来ないじゃないですか!」
空気が凍った。
「……要するに、一階を壊す。二階が落ちてくる。二階を壊す。三階が落ちてくる。というのをやりたいんですか?」
「そういうことですよ!むふふ~♪」
(……純粋に迷惑ですね)
敦美ちゃん。我慢してあげて。
「ただ、それでは時間がかかりますよ」
「むー……なら、上をぶち抜きましょう」
というわけで、天井を見上げる椿。
「えいっ!」
一閃。
天井にバキッ!と亀裂が入った。
(威力だけはとんでもないですね)
純粋に言えば、このお菓子のタワー程度なら、敦美だって粉砕可能だ。
だが、それを『楽に可能か』と言われれば首を横に振る。
何かを壊すというのは純粋にかなりのエネルギーを使用するものであり、簡単なことではないのだ。
軽い気持ちで破壊をもたらすことができるという意味で、椿は強い。
強いが……それを制御している精神性にやや問題というか『不安』があるというのが現状だが、まあ、こればかりはどうしようもないだろう。
「……よし!頂上までたどり着きました!……む?」
椿が元気よくタワーの最上階に到達。
そこでは……お菓子で出来た鎧を身にまとう男性が、地面に「の」の字を書いていた。
「お、俺の城が……俺の城が……」
気持ちはわかるが、椿ちゃんに狙われたのが運の尽きということで頑張っていただきたい。




