第千百五十九話
「む……む……」
時島グループの社員食堂にて。
ニコニコしながらピザやハンバーガーなど、カロリーが爆発しているかのようなものを食べまくっている椿。
正直、これを見るだけで『罪深い子』扱いされるのが時島グループに所属する『層』のようなものだ。
若いか幼いか、いずれにせよ美女、美少女で構成されているので、こんなカロリーが爆発するようなモノばかり食べている椿に対して、『マジかよ』と思わない者はいない。
……のだが、急に、椿の手が止まった。
プルプルと震えて、目はぎゅーっと閉じられて、何かを強烈に我慢しているようにも見える。
「……つ、椿ちゃん。大丈夫?」
社員の一人が椿の肩に触れた。
次の瞬間――
「うにゃああああああ~~~っ!」
ぎゅううううっ!とその社員に抱き着いた。
「えっ、ええっ!?」
「むううう~~~っ!むううう~~~っ!」
抱き着いた力は増すばかり。
椿は感情が爆発しているかのように、声は漏れているがそれが意味をなしていない。
「ど、どうしたの?えっ?」
全力で抱き着いているが、椿の筋力は高い物ではなく見た目相応のため、別に痛みを感じるわけではない。
だが、どういうことなのかがさっぱりわからない。
「い、一体どうしたんだろう」
「こんなこと今までになかったし、データにもなかったよね」
「はぁ、はぁ、うらやましいっ!」
若干、禁断症状が出ている者もいるが、時島グループとしては予想外だったようだ。
「……あれ?セフィコット?」
社員の一人が窓に映るセフィコットをとらえた。
全員がそっちを向く。
すると、セフィコットはタブレットを見せてきた。
『安心するといい。これは単なる発作だ』
んな無茶な。
「え、これ……不定期で発生するの?」
「そうなんじゃないかな。発作って言ってるし」
困惑しかない。
「むううう~~~っ!」
なかなかやまない椿の発作。
「……これ、いつまで続くのかな」
『5秒から20分』
幅広すぎぃ!
「それって、確認できた限りではってことだよね」
『その通り、もっと短い場合も、もっと長い場合も考えられる。本当に謎』
長い間椿を観察しているであろうセフィアでも、こればかりは本当にわからない。
椿の生態は本当に謎なのである。
「あ~。でも、椿ちゃんの体ってめっちゃ柔らかい」
『羨ましいいい~~~っ!』
人形も禁断症状が発生するんだ……といった雰囲気になったが、まあ、それを恥ずかしがるような感性など持っていない。
「むうううっ!むにゅうううう~~~っ!」
椿の発作がなかなか静まらない。
……何かあったのだろうか。
……何もなくてもこうなるか。




