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第千百五十八話

 椿に良い感情を抱いてもらえば、それに応じて秀星に対して顔がきく。


 そういう予想をするものは多いし、実際、椿は『どんな楽しいことがあったのか』ということで、よく家族で食事をするときに話すことも多い。


 というわけで、『ダンジョンでいいアピールをしよう!』ということになった。


 裏事情として、最近アトムが時島グループに『カードダンジョン攻略の推奨』をしてきていることもある。


 業務上、いろいろやらなければならない項目はあるのだが、それらを満たしているのが『カードダンジョンに椿を連れていく』ということであり、社員たちも『いける!』と思っているわけだ。


 で、ダンジョンにもぐるわけだが、誤算があった。


 良いアピール云々の前に、椿ちゃん。一人でもめっちゃ強い。


 椿が使う神風刃だが、これは八代家が代々継承する『対応力』に関する技術を詰め合わせたものを、秀星が椿用にアレンジしたもの。


 今よりもより『真理』に近いとされる秀星が開発したその技術が弱いはずもない。


 もちろん、それだけで最強になれるわけではない。


 だが、引き継いでいる遺伝子が意味不明なレベルに達しているため、素質という点では抜群。


 なので、めっちゃ強い。


 良いアピール云々以前の問題だ。


 椿は人を実力で判断する人間ではない……いや、人をどんなふうに認識しているのかイマイチわかりにくいが、それはそれとして、ダンジョンに入っているのに実力という視点で椿に抜かれると、なんだか妙な気分になる。


 というわけで、『アピールなんて考えてる場合じゃねえ!全力でやらねえと!』となっているわけだ。


「誤算中の誤算ですが、それで悪い結果を引き起こさないのが彼女らしいですね」

「一部の人しか嬉しくねえのもらしいっちゃらしいな」


 カードダンジョン攻略報告を確認しつつ、敦美と清磨はそんなことをつぶやいた。

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