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第千百五十七話

 椿は新年度が始まる前に未来に帰ったので、新年度から精力的に活動している清磨たちと椿は面識がない。


 もちろん、あれだけ行動し続けていれば、様々なカメラに映りまくっているし、情報だけでもかなりのものになる。


 そのため、基本的に時島グループの人間は、椿をデータだけで知っているという状態だった。


 まあ、データだけの知識でも、『この子はかわいい』ということが大変わかりやすい状態だったので、実物があらわれたら、そりゃ『ひゃっほおおおう!』となるわけだ。


「えへへ~♪皆さん優しいんですね!」


 とても笑顔の椿。


 魔法省に突入した時も女性職員にもみくちゃにされていたが、椿はむしろそういうのを望むタイプだ。


 スキンシップは大歓迎。


 抱き着こうがどさくさに紛れて撫でまわそうが、椿はテンションが上がるだけである。


 誰かに触れられるということに対して、一切の嫌悪感を抱かないのである。


 ……あまり見ないタイプではあるし、どこか、椿はかわいらしいが、いじったら面白そうな雰囲気も兼ね備えているという、様々な性癖に対応するタイプの人間なので、結局、『わけのわからんこと』になる。


「……ふむ」


 敦美は本社で動き回っている椿をカメラ越しに観察して呟く。


「……椿さんがいると、業務に支障が出ますね」


 敦美は社員教育(せんのう)によって、清磨への貢献度を高めたりしている。


 実力があり、容姿も強化されて、言い換えれば『冗長する材料』が揃いまくっているわけで、それを回避するための教育でもある。


 それが功を為したのか、一応業務上のクオリティは上昇しているものの、椿が本社に突撃してきたことで、意識が完全にそっちに向いているのだ。


「……まあ、普段からいろいろ苛めているようなスケジュールですからね。息抜きは必要ですし、その息抜きで椿さんを使えば、効果的であることもわかりますが……」


 だからと言って、自分がやった教育が崩れる可能性がある。


 それほど、椿の存在感は異常であり、何故か『椿に対してあまり感情が向かない敦美』にとっては、あまり長くいられると、迷惑とまではいかないが、計画が狂う。


「……まあ、利用できるだけ、利用させてもらいましょうか」


 とはいえ。そうとは言えである。何事も『活用』だ。


 敦美がそれをできる頭脳を持っているということに変わりはない。

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