第千百五十四話
「椿の体内に因子が隠されてた?」
「ええっ!?そうだったんですか!?」
高志と来夏は頭痛がしてきた。
秀星に家に行って、いろいろ確認したのだが、椿はマジで何もわかっていないのである。
想定していなかったのかと言われれば当然そんなわけがないのだが、ここまでストレートに示されると何かが納得できない自分がいる。
「生物の中にも因子を保管できるって言ってたが、まさか椿に……いや、一体いつ?」
秀星は『保管されている因子』を感知できない。
そのため、いつ椿に因子を仕込まれたのかがわからない。
「椿、心当たりはあるか?」
「うーん……全然ないですね!」
っていうと思いました。
「まあ、椿だしなぁ」
「ただ、満面の笑みで言われるとマジでどうしようもないって感じだな」
「これから何かを隠すときに椿を利用される可能性が高いからなぁ……」
「む?」
よくわかっていない様子。
ただ、本当に面倒である。
まあ、体の中に何かを仕込むというのは、確かに気付かれないようにするものなのだが、椿の場合は本当に周りがわからない。
「椿って、体の中でいろいろあっても分かりにくいだろうからなぁ……」
「そうですかね?」
うーんうーんと首をひねる椿。
とはいえ、可能性が非常に高いのだ。
行動範囲がかなり広く、活動的で、様々な人に会うことに対して抵抗感がない。
そのため、風邪などをはじめとするウイルスを貰っている可能性がある。
しかし、椿の体内では、全ての細菌が椿と共存関係になる。
だが、その椿の体内から出てきた細菌が他人に入ったとして、悪さをしないのかと言われればそういうわけではない。
……椿は手洗いうがいと歯磨きをしっかりする子なので、エチケットという意味では質が高いことも事実だが。
「で、秀星、これからどうするんだ?」
「沙耶の主張では、椿の体内にはもうないはずだ。ただ……保管されてる因子が見えない俺には、ある状態の椿とない状態の椿の違いが分からないからな」
「むむっ?」
首をかしげる椿。
君には何も聞いていないから安心していいよ。
「……結局手詰まりか?」
「さあ……ただ、何か起こりそうな気はするけどな」
秀星はそうつぶやく。
秀星は、椿に仕込まれていた因子は見えない。
だが、椿を見て、『どんな魔法を使ったのか』といったことや、『どんな手段を用いたのか』ということは分かる。
明らかに椿は、『何かと戦っている』のだ。
(そう、その戦った相手が動く可能性はある。そろそろ、接触したいんだがなぁ)
結論。
なかなか上手くいきません。




