第千百四十九話
「……」
秀星とアトムは、アトムの執務室で話していたが、そこに一つの報告書が届いた。
それを見たアトムだが、なんというか、仕方がないと思いつつも、どうにかならなかったのかと思いたくなるような、そんな感情が見え隠れするものだった。
「アトム。どうした?」
「恐れていた……わけではないが、そうなるよなぁ。と思う状況になった」
「ん?」
「手に入れたダンジョンカードは、『誰にでもダンジョンを作成することができるもの』だからな」
「つまり……カードダンジョンが再出現して、それを攻略したが、あまり知識のないやつが、新しくダンジョンを作ったってことか?」
「そういうことだ」
「それはまた……」
今の地球において、ダンジョンはとても資源として重要なものである。
魔石の主要な獲得場所であり、その存在はとても大きなもの。
エネルギー問題を丸ごと解決するゆえに、需要は安定して高い。特に、石油が取れない日本では紛れもないことだ。
だからこそ、『簡単にダンジョンを作れる』というカードを手にした場合、目先の利益を考える人間がどういう行動をとるのかなど、火を見るより明らかである。
そして、その明らかな状況になってしまったということだ。
「一応、カードダンジョンを手に入れた場合に、魔法省が高額で買い取るということも発表しているが……ダンジョンを作ることで、永遠に利益を出せると考えている連中が多い。これでは、何をどう弄っても、ダンジョンカードを魔法省で回収することはできないか」
ダンジョンを作るという点では、秀星だってカードを使わずとも可能である。
ただ、そんな秀星がアトムの管轄で動いているからこそ、現在の日本は『デザインされている』ともいえる。
しかし、今回のダンジョンカードによる作成は、形成されつつあった秩序を丸ごと覆す代物だ。
『ダンジョンカードが流通している』
ある意味そうともいえる状態であり、ある意味で『それが正常』ともいえる。
「……怠いな」
「ああ。ダルイ」
人間の欲望の話であり、見えていたことではあるが、面倒なことに変わりはない。




