第千百四十八話
アトムにカードを見せたら愕然とされました(予定調和)
彼としてもいろいろ予想できる部分はあっただろうし、カードダンジョンが出てきたからという要素だけで組み立てている計画もいろいろあったはずだ。
しかし、時間も人材も有限なわけで、『ダンジョンのボスを倒してもカードは出てこない』という判断を下して計画を立てたが、それがすべて無に帰することとなったわけである。
……そりゃ、頭を抱えるのも仕方がないというものだ。
『フフッ、人で遊ぶというのはやはり楽しいものだね』
「ふむ、そういうものだろうか。まあ、我も時々、そういうことをする日はあるのだがな」
沖野宮高校の、秀星が作ったチケットダンジョン。
その一番奥にいるラスボス、黄金竜王グレイ・リーサルドーラ。
究極の暇竜であり、株や為替で資金を調達しつつ、ネットを使ってオンラインゲームで遊ぶ日々である。
そんな彼だが、どうやら最近、話し相手となる友人ができたようだ。
プレイヤーネームは『マクラ』である。
『次はどのクエストに行くんだい?』
「ほとんど終えてしまったからなぁ……最新のイベントクエはどうなっている?」
『一部のプレイヤーが隠しアイテムを発見したという噂が転がっている程度だね』
「なら向かうぞ!」
カタカタとキーボードをたたく。
『……それにしても、君って本当に暇なんだね、いつ見てもログインしてるよ?』
「こちらのセリフでもあるぞマクロード」
『……おや、どこでバレたんだい?』
「椿がマクラマクラと叫びながら興奮していたからな。話を聞いてみたらお前の名前に行きついただけだ」
『椿ちゃん……話題に困らないというか、何かがヒヤヒヤするというか……』
「ちょっとくらいヒヤヒヤする方が楽しいだろう」
『まあ、それは確かにそうだけどね。グレイ』
……一応補足だが、このドラゴンの本名はグレイ・リーサルドーラなのでグレイは本名だが、このドラゴンはプレイヤーネームの方もグレイに設定している。
「まあ、我は新しい話し相手が増えれば増えるほどいいからな。ただ、椿のネーミングセンスがなぁ」
『確かにね。さすがに、私もマクラマクラと連呼されるのはねぇ』
「我なんて椿が考えた初期設定では、名前が『ゲンキ・モリモーリ』だったぞ」
『災難……ラスボスという属性に何か恨みでもあるのかな』
「わからん。まあ、何となくそう言う部分はあると思うぞ」
『私がそのカテゴリであることを知らないはずだけどね』
「勘だろう」
『だろうね。あー……面倒だなぁ』
椿に真意だとかそういったものは何一つない。
だが、マクロードもグレイも、どこか備わっている『人間らしさ』によって、裏側を探ろうとしてしまう。
が。結局のところ椿にそんなものはないので毎回空振りだ。
……スリルという意味ではなかなか楽しいのだが、ここまで攻略する気が失われて行く相手も珍しい。




