第千百四十七話
「ダンジョンクリアですううう~~~っ!」
椿がボスから手に入れたカードを手に宣言する。
「……カードダンジョンってアトムが言ってて、その意味がよくわかんねえと思ってたけど、本当にクリアしたらカードが手に入るんだな」
「ただ、前にこの手のダンジョンをクリアした時にはカードは手に入らなかったよな。なんで方針を変えたんだろ」
不思議そうな顔つきになる大人二人だが、椿はそれを全く気にしない。
「むふふ~♪む?何かがカードの中に入ってる感じがするんですけど……まあいいですね!」
よくねえわ。
「……うー」
何か、思うところがある様子の沙耶。
ただ、沙耶が反応したということは……いや、置いておこう。
「とりあえず、カードに関してはアトムにでも渡しておくか」
「だな。アトムなら何かわかるかもしれねえし、俺たちが持ってても解決しねえや」
カードが手に入るとアトムが想定していなかったのか、高志も来夏も、アトムから手に入れたカードに関する指示を全く聞いていない。
手に入れたカードはアトムに渡して判断をゆだねるべきだろう。
まだ姿を見せない『マクロード・シャングリラ』というボスとの対局は、高志と来夏ではどうしようもない。
来夏の『悪魔の瞳』の観測範囲もかなり広いが、見えない部分は多々あるのだ。
「アトムはなんて判断するんだろうな」
「それは分かんねえけど……頭抱えて絶望するのが目に見えるな」
「確かに」
ただでさえ業務が多いアトム。
何故敵が再出現したのかということに対する回答として、『ダンジョンのボスにカードを与えるため』ということになれば、その点だけは納得できる。
だが、それだと逆に『なぜボスにカードを与えたのか』という疑問が出てくるのだ。
100万枚存在するカードだが、前回は一枚たりともこちらに渡す気配がなかったのに、なぜ今になって急に渡すのかがわからない。
アトムとしても想定しなければならない部分が多いだろう。
ただ……まずやるのか、このカードを回収することだ。
手に入らないと思っていたものが手に入るようになった。
それがこのダンジョンだけなどということはあり得ないが、アトムが手に入ることを想定していない以上、他の人間がこのカードを手に入れた場合にどうするのかが想定できない。
「マズいかもしれねえな……」
「だな」
「うー……」
世界情勢が、ではない。
アトムの胃が、である。




