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第千百三十九話

 椿が町中を走りまわる。


 それだけで、九重市の雰囲気は大きく変わる。


『むむっ!これ買います!』

『あれ、椿ちゃん!?未来に帰ったんじゃなかったの!?』

『むっふふ~♪私はドッペルゲンガーなんですよ!』

『へえそうなんだ。またいらっしゃい!』


 マジでこんな会話が発生するレベルである。


 それが椿の魅力というか個性というか、まあ、『そういうものだ』と言われればそれまでだが。


「やっぱりこっちの時代も楽しいものがたくさんありますね!」


 椿がサングラスをかけてニヤニヤしながらそんなことを呟いた。


 ちなみに、セフィコットが常に追いかけてカメラを回しているので、そんな椿もしっかり記録されてます。


「サングラス似あうね。椿ちゃん」

「未来でもよく言われます!」

「そうなんだ」

「はい!体に刺青を入れてて、肉声言語が通じなくて肉体言語しか通じない人がいるんですけど、そういう人たちが集まってる建物にサングラス掛けて友達といったときに言われました!」


 ……893の事務所?


 まあ、椿は怒鳴られようが武器を向けられようが全く動じない鋼鉄の鋼の持ち主だからね(怖いのは怒った時の風香と聡子だけ)。


 暴力をちらつかせても全く動じず、ちっこい体から放たれる身体能力は化け物レベルであり、さぞ不気味に思ったことだろう。


「あはは……椿ちゃんらしいね」


 椿ちゃんは怖いと思っているものはあっても、恐ろしいと感じているものがないからね。


「む?おっ!猫ちゃんですううう~~~っ!」


 野良猫を発見してピューっ!と走っていく椿。


 そのまま、野良猫を慣れた手つきで抱き上げると、そのままぎゅうううっ!と抱きしめた。


「にゃあああああっ!」


 悲鳴を漏らす猫。


 猫だって無警戒に抱かれているわけではない。


 めちゃくちゃ笑顔で自分に迫る人間を見て、無警戒な野生動物がいるわけない。


 しかし、椿の身体能力はそれを軽く上回るのだ。


「……む?この猫ちゃん。体内になんか変なものが……えいっ!」

「ふぎゃあああああっ!」


 地面に落ろすと、背中に主張を叩き込む椿。


「椿ちゃん!?」

「何やってんの!?」


 驚く2人。


 だが、猫はちょっとだけ苦しそうな顔をしたと思ったら、ゲホッと何かを吐き出した。


 それは……。


「……い、因子だと」


 マクロード・シャングリラの因子。


 それが……猫の体内から吐き出した物体の名称である。


 ……嘘やろ。

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