第千百三十四話
「みゅうううう!いみわかんないですううううう!」
椿は叫んだ。
それはもう叫んだ。
目の前では、椿が出した風が調理され、ファストフード店から帰ってきたような様子でむしゃむしゃ食べていた。
「何を驚いているんだ。魔力はもともと人間が体内で作り出す物質。きちんと処理を施せば、人間の体内に入れて、それを消化することも可能だぞ」
「そういう問題じゃないですううう~~~っ!」
正直、ボーっとしながらむしゃむしゃ食べているレルクスを見ていると、『まあ、これくらいのことはよくあることだよ』という雰囲気を感じなくもないが、もちろんそれで納得するほど椿は単純ではない。
椿はバカではあるが、考えることは嫌いではない。
だからこそ、一応であろうとも、椿なりの解釈で納得や理解をしようとする。
だが、レルクスを相手にすると、全く何もわからない。
「にゅうう……か、価値観が違いすぎるですううう……」
唸るしかない椿。
「というか……私がしている『攻撃』を、レルクスさんはなんだと思ってるんですか?」
椿はふと、そんなことが気になった。
椿は現在、レルクスを相手に戦っているところだ。
レルクスを観察し、刀を振り、魔法を放つ。
そこに『戦闘』以外の要素が混ざることはなく、稽古として、明確な意思を持って、椿はレルクス相手に戦っている。
どうせ理論などよくわからないので実戦形式。という、椿らしいそれは置いておくとして、しっかりと攻撃の意思を持っていることは確かだ。
だが、レルクスを見ていると、『椿を相手に戦っている』という感じがまるでしないのである。
「……正直に言えば、戦いとは思っていないな」
「じゃあなんなんですか!私のことをなんだと思ってるんですか!」
「……曲芸のエキストラ?」
「誰が曲芸ですかあああ~~~っ!」
憤慨する椿だが、実際、椿の攻撃という『リクエスト』に対して、レルクスが即興で『改造』という曲芸を披露する。という現状を考えると、別に的外れとは言えない。
「むううううう!ぶっ倒してやるですううう~~~っ!」
椿ちゃんには無理じゃないかなぁ……ま、頑張って。




