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第千百三十話

 大草原のど真ん中で、マクロードに出会った椿。


 小さな家のリビングに入って、ソファで対面する。


「むー……マクロードさんって呼べばいいですか?」

「もちろん。まあ、別の呼び方でもいいけどね」

「じゃあ……マクラさんですね!」


 『マク』ロード・シャングリ『ラ』


 ということなのだろうか。


「えっ……そ、それは……」


 さすがにこれは言葉が詰まるマクロード。


「マクラさんですね!」

「え、でも……」

「マクラさんですねっ!」

「……あ、はい。もうそれでいいです」


 頑張れよラスボス!


「むふふ~!マクラさんはなんでこんなところに住んでるんですか?」

「ああ。まあ、私はこの草原に封印されてしまっているからね」

「封印ですか?」

「そう。私個人に対する封印でね。私自身はこの草原から出られないんだ。部下がその封印を解こうと必死になってしまったことは、私も誤算だったけどね」

「封印ですか?」


 あまりそういう風には見えなかったのか、椿は首をかしげる。


「うん。過激派が結構多いからねぇ……部下もこの空間に時々やってきてはいろいろ報告しに来るんだけど、彼らは私を復活させようと躍起になっているから、いくらやめろと言ってもやめないんだよね」

「マクラさんって威厳がないんですね」

「威厳がないというのは良いがその二人称と合わせるとなんだか腹の底から力が抜けるよ……」

「む?」


 よくわかっていない様子。


「まあ、それはいいとしよう。で、椿ちゃんはどうやってここに?」

「直方体で上にボタンが付いているものが天界に置かれていたので、それでやってきました!」

「ふむ、部下の方法とは違うな。敵勢力が用意した封印関係の装置かもしれない」

「むー……何かよくわからないですけど、マクラさん。なんだかすごく幸せそうですね」

「そうみえるかい?」

「はい。重責から解放された部分があって、それで安らかになったような感じがします」


 椿の頭にはラターグが浮かんでいる。


 ああ見えて結構行動するタイプなので、いろいろ終わった後はホッとしているのだ。


 比べられて嫌かどうかは、この際除外させてもらうが。


「なるほど、確かに、そういう部分はあるかもしれない。ただまぁ、部下が凄く活動的になってるから、どうしたものかと思うけどね」

「そうなんですか……まあ確かに、ガツンと言えるタイプに見えませんからね」

「部下からも言われるねぇ。もっとシャキッとしてくださいって」


 まああえて例に挙げれば、どこか『ラターグ臭い』ともいえる。


「でも、時にはしっかり言わないとダメですよ!」

「それも……そうだねぇ」


 ハハハッ……と乾いた笑いをするマクロード。


(むー……何を隠してるんですかね?)


 思うところはある。


 ただ、それが何なのかを当てるには、まだまだ椿は子供過ぎる。

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