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第千百二十三話

「お母さーーーーん!」

「うわっ!つ、椿ちゃん!?」


 ラターグの屋敷。


 秀星は研究室で因子の監視と研究をしており、風香と星乃が地下でフェルノから稽古してもらっている。


 という状態で、ラターグが椿を連れて帰ってきた。


 これで、椿がどこかに突撃しないわけがない。


 ……で、その先は風香だった。

 秀星がいた研究室だが、秀星が忙しいのか、扉があかなかったのだ。

 というわけで、椿は風香がいる方に突撃したのである。


「……え、ど、どういうこと?」


 風香はラターグの方を見る。


「いやー……アトム君と模擬戦をやってたら、興が乗ってね……暴れすぎたら空間が割れたんだよ。そこから椿ちゃんが落ちてきちゃった」

「……?」

「ラターグ。それ……大丈夫なのか?」

「レルクスに確認したら問題はないみたいだよ。時間移動を人間がするのは少々問題があるけど、でも、秀星君自身が、どっちの時間でも時間移動が可能だし……そもそも、この椿ちゃんは人間であって人間じゃないからね」

「ますますわからん……あ、確かに」


 フェルノが椿に近づいていく。


 何かが分かったようだ。


「……なるほど、同じ元素を同じように並べているが、本体のコピーだな」

「むっふふー!そうなのですよ!私はどこかの研究所がごにょごにょ作っていたドッペルゲンガー発生装置を使って、2人になったのです!そして増えた方がこっちに来たのですよ!」

「ど、ドッペルゲンガーって……尚更問題があるような……」

「姉さんが本体となり替わってやろうとかそういう面倒なこと考えると思えないけどな……」

「それもあるけど、今の椿ちゃんは『オーバーリンク』状態で、考えていることや体験したことが本体の方に筒抜けなんだ。だから、未来の方に残された椿ちゃんが過去に行けなくて悔しがることもないってことだよ」

「なるほど……なるほど?」


 納得できるようなできないような……。


「要するに、未来に帰る必要がないってこと?」

「そうだけど、この椿ちゃんは持続力に問題があるっていうことがあるかな。多分、1年も持たないと思う」

「あー……そういう事もあるか」


 ドッペルゲンガー発生装置のクオリティの問題だろう。


「要するに、また一緒に暮らせるって言うのは間違いないね」

「むふふ~♪その通りです!」


 にぱーっ!と輝くような笑顔を浮かべる椿。


「……この子。本当に16歳なのか?」

「不思議かもしれないけど16歳だな」

「いやー。君も15歳にしては落ち着いていると思うが……」


 確かに星乃も15歳にしては……というか、沖野宮高校に通う生徒は、秀星という存在が大きすぎるし、天窓学園の方も、基樹の存在が大きすぎて、『一周まわって感』があるのだ。


 その影響は未来にも影響しているのか、それとも、武器を扱うゆえに倫理観を叩き込まれるのか、落ち着いている部分がある。


「むっはー!」


 いや、落ち着いてない子もいるけど。


「……まあ、とりあえず、お帰り、椿ちゃん」

「はい!」


 一つ変わらないのは、椿はどこに行っても元気ということだ。

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