第千百十七話
「……はぁ。因子について何か知ってることがあるかって聞いたら、断片的だけど答えてくれたのはよかったよ」
「マクロードのことは名前と顔くらいしか知らないっぽいけど、さすがに回収対象である因子についてはいろいろ知ってたみたいだね」
「そもそも、アイツらの役割が、『適正に変化した因子の回収』だったからな……そりゃ、そんな単なる作業員に高い知識を求めても無駄と言えば無駄だわ……」
ラターグの屋敷。
ケースに入れた因子の様子を眺めつつ、秀星とラターグは話していた。
「末端の人間だよなーって思ってたら、本当に末端の人間だったって感じだよね」
「ああ。本当にマジでそういうのは勘弁してほしい……」
話が全然進まないから!
「……そういえば、フェルノは?」
「風香ちゃんに剣術を教えてるよ。まあ、屋敷に戻ってきたと思ったら、刀を使うめっちゃ強い神がいるんだ。別に教えてもらうことくらいはね」
「なるほど……ていうか、ここまでいろいろな奴が攻めてきたけど、刀、一回も使ってないぞ」
「使う必要がなかったんだから仕方ないね」
差がありすぎる。
「そんなに強いんだな……」
「僕の友人だよ?弱いわけないじゃん」
確かに、ラターグの友人って大体弱くない。
「しかし、風香はどこまで強くなれるかねぇ……」
「今の風香ちゃんってどれくらいの強さだったかな」
「まあ……アトムには勝てないだろうなってかんじだろ」
「風香ちゃんってさ。多分、『神祖』の神器を持ってると思うんだけど、それでもまだ勝てないのかな?」
「ああ。まあ、アトムは俺が知る限り、地球人では二位だからな。さすがにそんなに甘くないさ。風香は確かに強いけど……純粋な意味で『才能の塊』であるアトムには勝てないだろ」
「そうだねぇ……」
ラターグはつぶやく。
「……アトムも、結構不思議な感じなんだよね」
「不思議?」
「うん。魔力ってさ。もともと『安定』しようとする性質があるから、遺伝的に、人間って魔力を制御するシステムが体に備わっていないんだ」
「ああ。そうだな」
「で、アトムほどの才能があると、『成長速度』が『制御速度』を完全に上回るんだよね……だから、体内から魔力があふれて、それを体が耐えられないはずなんだけど……」
「まあ、アトムだし、何とかやってるんじゃないか?」
「そうかもね……」
話のオチが見つからない二人。
「……そうだ!そうだよ!こういう時はアトムだ!」
「そうだな!アトムなら突破口を見つけられるかも!」
頭の中が煮詰まったおバカ二人であった。




