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第千百十六話

「にゅおおおおお!んにゃあああああ!」

「ラターグ。どうしたんだ?椿みたいになってるぞ」

「それは椿ちゃんに失礼じゃないかな」


 ラターグの屋敷。


 とりあえず捕虜たちにはちゃんといろいろ食わせておいて、『尋問する意味はない』と判断されたので、『もっと上位のやつら』に会うまで処遇がお預けということになっている。


「くっそう……捕虜が増えるだけだよ……これだけ因子を弄りまくっているのに、嫌がらせにもなってないってことなのかなぁ?」

「さあ……まあ、それくらいしか考えられないのも事実だよな」

「でも、レルクスが言っていたことだからなぁ。相当嫌なはずなんだよ。向こうにとってはね」

「……そうなのか?」

「秀星君。レルクスが『全知』なのはわかってるでしょ?そんな彼のアドバイスでやり始めたのに、もしどうにもならないってなったら僕は今まで何をやってたんだって話になるじゃん!」


 プンプン怒るラターグ。


「……まあ、かなり先のための布石ってことはあるんだろうな」

「でしょうね。それは分かるよ?だって因子だ。後で回収するのは間違いないだろうし……あー……無駄な時間が多いよ」

「普段から無駄にしてるだろ」

「ぼくはね。将来的にゴロゴロダラダラするために今を最低限だけ(・・)頑張ってるんだよ。こういう形で無駄にするのは嫌なんですー」


 溜息が大きいラターグ。


「……本音がものすごく入ってたな」


 最低限だけ(・・)とは、思っていても言えないだろう。普通。


「まさか、直近で何かが変わるようなことじゃなかったなんて……僕、レルクスに何か悪いことしたかな」

「心当たりは?」

「うーん……いや、そもそも全知相手に心当たりって言葉を使われても困るんだけど?」

「知ってる」

「秀星君がいじめる~……」


 僕に味方はいないのか~とソファでごろごろするラターグ。


「はぁ、どうしよ」

「結局、因子の分析の方も進んでないから、他からの依頼もこなせないしな……」

「そんなのどうでもいいんだよ」


 どうでもいいんだ。


「……出来なかったら文句を言われるんじゃないか?」

「もちろん言われるよ。でもね。無視すればいいのさ。リピート再生攻撃で」

「ああ、同じ言葉を連呼し続けて誤魔化すアレか」

「そう、それ」

「……何度も通用するのか?」

「安心して。一回終わったらもうアイツら忘れてるから」

「進歩がさなすぎるだろ」


 救いようが皆無!


「……さて、そろそろ何か起こればいいんだけどなぁ……」


 はふぅ……とクッションを抱きしめるラターグ。


「……まあ、頑張れ、計画の大筋はラターグが決めることだからな」

「ダルイよ……」

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