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第千百十五話

「……増える捕虜。増えぬ情報、意味不明」

「わけのわからん川柳を読んでる暇があったらさっさと別のことを考えろ」

「そうだぞラターグ」


 ラターグの屋敷。


 その地下の捕虜収容施設にマクロード陣営の部下どもをぶち込みまくったのだが、結果、ただ捕虜が増えていく一方だった。


 もうちょっと情報を持ってるやつに人形管理やらせろやと言いたくもなるが、まあこればかりは本人のやり方次第なので仕方がない。


 仕方がないが……進展しないのでイライラします。


「あのねぇ。君たちも頭を使ってくれないかな?フェルノは書類整理してるからいいよ。秀星君はなんで本なんて読んでるのさ!」

「いやー。なんか、いろんな本があるからな。しかも、地球みたいに規制がきつくないから、文字通り何でもおいてるし」

「それが楽しいのは分かるけど……てかいま、何を読んでるの?」

「未来で発売されてる本らしい」

「へー」

「タイトルは『浦島太郎と椿ちゃん』だ」

「なんだろう。わかる様で想像できないことばかり書かれてそうだね……」


 椿が本当に『あの椿』なのかに関しては……まあ、秀星が読んでいるのだから多分そうなのだろう。


「冒頭で子供が亀を苛めてるだろ?」

「だね」

「あのシーンが、椿と亀が遊んでる描写に切り替わってる」

「浦島太郎はどうやって竜宮城に行くんだい?」

「椿が『儀典神風刃・絶技・八王天命』で海を真っ二つにしたら竜宮城が見えたから、浦島太郎を担いで突撃してる」

「やりそう……」


 椿は意外と常識は備わっている方だ。


 ……比較対象が高志や来夏という前提付きだが。


 ただ、そんな椿を使ってフィクションを作った場合、一体どうなってしまうのかわからないし、そもそも何が起こっても不思議なことが何もない。


「……まあ、椿ちゃんの性格だし、竜宮城に行けたらまあ何とかやるでしょ。で、玉手箱だよね。そのあたりは?」

「椿は当然言われたことなんて聞きやしないから、玉手箱を開ける」

「おお」

「すると……玉手箱の材質がどんどん古くなっていって、最終的には朽ち果てて消えていった」


 逆流してないか?


「まあ、その本の作者は椿ちゃんのことをよくわかっているね」

「そう思う」

「で、誰なの?」

「未来の聡子だ」


 ママ属性を解放するのは良いがそれはそれでどうなんだ?


「……もしや」

「ああ。保育園で読み聞かせに使ってる」


 子供に悪影響ではないだろうか。


「……なるほどねぇ。なんていうか、らしいなぁ……って、そんなこと言ってる場合じゃなああい!さっさと考えろおおおお!」


 怒るラターグであった。当然である。

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