第千百十三話
「アーボンから何か情報は取れたの?」
尋問室が用意されて、そこにアーボン君は入れられることになった。
フェルノが『見苦しいだけだから待ってろ』といって、一人で対応。
で、とりあえずラターグが知りたいことリストを作成し、それをフェルノに渡して、彼がアーボンから聞き出した結果だが……。
「敵組織のボスの名前が分かった」
「もう!?早いねぇ。何て名前なの?」
「名前はマクロード・シャングリラ……どうやら、『大魔王』を名乗っているらしい」
「そ……そうか!」
反応に困ったラターグは万能な返事で誤魔化した。
「大魔王ねぇ……それだけ強大な力を持ってるってことか?」
「いや、手に入れようとしている。といったところだ」
「手に入れようとしている……か」
今のままでも、『本体』は相当な実力を持っているだろう。
だが、それ以上に求めているとすれば、一体どういうことになるのだろうか。
「ダンジョンカードを襲撃して手に入れたのにはどんな理由があるのかな……」
「ダンジョンマスターとしての機能を使いたい。ということになるのか?」
「アーボンには知らされていないが、全てのダンジョンカードを持っていることで使うことが可能な『とある力』が必要になるらしい」
「なるほど、その力を使うために、ダンジョンを運営して、ポイントを貯める必要があるってことだね」
ラターグは納得した。
「うーん……だけど、ダンジョンのカードの力だけで、そこまでの力が手に入るのかな。そもそも、そのカードを使ってマスターになったやつに、秀星君は余裕で勝ってるし……野望と現実の幅に差があるような?」
「いや、どうやらそうでもないらしい。その強化手段さえ手に入れることができれば、それを弄ることは可能のようだ」
「うわー……お相手さん。技術派だねぇ」
うんうん唸っても答えは出ない。
「……アーボン君。そこまで情報は持ってないんだよね」
「戦闘員ですらない、ただの人形管理だからな。ただ、それくらい下っ端でも、あれくらいの強さがあるということだ」
「うわぁ……でも、地球に送り込んだのが側近たちじゃなくてダンジョンの配置ってことは、何かしらの制限を抱えまくってて、制限の範囲の中でもまた事情がありそうだね」
「だろうな。まあ……1度敵に回したことがある者なら、『全知神レルクス』は無視できない。正直……ビビってるのは間違いないな」
「余分なコストを使いたくないか……だけど、地球が作戦の軸なのに、そんな感じで大丈夫なのかな。神祖が動くよ?」
「アーボンが言うには、問題ないようだ。ただ、本当に何も知らされていない部分が多すぎて、正直無駄だな」
「だよねぇ……」
まあ、下っ端に作戦の肝など教えないだろう。
その『肝』の部分がどのようになるのかによって、誰が『利』を得るのかが大幅に異なるからだ。
士気に関わる可能性だって十分にある。
「……フェルノならどうする?」
「俺か?……とりあえず、因子に付与を与えまくって、ストレスを与えまくろうとは思ってるよ。こっちから向こうの本部に手を出すのが今のところ出来ていないからな」
「地道……まあでも、何も手段がないよりマシか」
結論、一歩前進。
ただ、本当に一歩だけである。




