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第千百九話

「このあたりか……」

「殺風景なエリアだねぇ」

「辺境すら大都会みたいになってるのに、こんなことになってる場所があったんだな」


 地平線まで荒野が広がる大地。


 秀星とラターグとフェルノの三人は、その中央に到着した。


「まあ、天界っていうのは『全てが用意されている』と言って過言じゃないからね。だってそうしないと、天界にいる意味のない神々が出ちゃうからさ」


 屋敷から持ってきたケースをセッティングしながら、ラターグはつぶやく。


 パパッと設置しているので、どうやら慣れた様子だ。


「よしっ!できたよ。これから僕と秀星君で因子に魔力を付与していくから。フェルノはその間の護衛を頼むね」

「任された」


 フェルノが柄に左手を置いて頷く。


「じゃあ、秀星君。やるよ」

「ああ」


 二人でケースを挟むように並ぶと、手を掲げて魔力を入れていく。


 因子はケースでたびたび姿を変えるが、それがどんどん形を変えていくようになっていく。


「おっ、反応が速くなってきたね」

「さすがレルクスが指定した通りにすると変化が……!?」

「何かが来る」


 空間がビキビキと割れるような音が響く。

 そこから、ヒューマノイドと言えるだろう。顔面がないロボットが姿を現す。


「……何だアイツは」

「秀星君。手を止めちゃダメ。アイツくらいならフェルノは普通に倒せるから」

「……奥からどんどん出てきてるぞ」

「それは聞いてないなぁ……フェルノ。大丈夫?」

「大丈夫じゃなかったらどうするつもりなんだ?問題ないに決まってるだろ」

「それもそうだ」


 次の瞬間……フェルノは、自分のところに迫っていた人形の首を掴むと、そのまま地面にたたきつけていた。


 人形は潰れて動かなくなる。


「あれ、顔面にコアをつけたのか?珍しい設計だな。胸にコアを作って、その周りを頑丈に囲むのが普通だろ」

「冷静だねぇ……」

「ただ、この人形、予想より高性能だぞ」

「でも想定ないでしょ」

「ああ。まあな」


 ダンジョンで用意していた戦力があまりにも貧弱だったのでどうしたものかと思っていたが、やはり『本体が保有する戦力』はかなりのものらしい。


 フェルノが叩き潰してしまったが。


「しかし……大体六万体くらいか?よほど、君たちの作業が嫌みたいだな」

「みたいだねぇ。まあ、大体そんなものだろうとは思ってたからいいんだけどさ」

「まだまだこっちは時間がかかるぞ。それまで向こうはエンドレスで来るんじゃないか?」

「初手六万だし、人形だからな。きっと作り置きが凄いんだろ」

「メンテナンスせずによく動かせるもんだ。維持費ってものを考えてないよね全く」


 ダラダラ話しているが、どうやら初手のフェルノによる破壊が効いたのか、猪突猛進はしてこない様子である。


 ただ、かなり多くの人形が集まっているし、何より消耗品だ。


 彼らのボスがどう判断するかで、状況は変わるだろう。


「まあ下手に刺激してもアレだ。俺は護衛しか頼まれてないからな。迎撃はしても、こちらから余分な干渉はしないぞ」

「それでいいと思うよ」

「今のところはって前提がつきそうだけどな……」

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