第千百七話
「……レルクスからもらった資料を大雑把にまとめて言うと、特定の地点で、因子に対して特殊なコードを組み上げた魔力を付与するってところか」
「そうみたいだね。ただ、魔力を付与する際に、邪魔者が飛んでくる可能性が高いっていうことも書かれてるなぁ……」
屋敷で資料を読み直す秀星とラターグ。
要点をまとめるなら、2人が語った2点が重要と言えるだろう。
ただ、付与するコードの精密さが頭おかしい上に、その『邪魔者』の戦闘力も中々高い。
「……助っ人というか、守ってくれる人が重要だね。どうあがいても、因子に付与しようとすると邪魔者が来るのは確定らしいし、付与を始めた時点で向こうが気づいちゃう」
「その敵の戦闘力も相当だな……師匠を呼ぶか?」
「いやぁ。神祖はヤバいよ。天界が指定地だからね。レルクスの方もそれは視野に入れてないと思う」
「……ふーむ。ただ、このレベルの敵にかなう神って、俺知りあいにいないぞ」
自分が戦っていいのならそれに越したことはないが、今回の付与魔法は長時間をかけて行うものだ。
そのため、強い助っ人を呼ぶ必要がある。
しかし、頭の中で助っ人になるような神が、秀星の頭の中でモヤモヤとしか出てこないのだ。
あえて言えば天界神ギラードルで、現在は教師をしているが……。
「今のギラードルが天界に来るのも、少々不味いなぁ。いろいろな意味で」
沙汰の影響。としか言えない。
「ラターグにはこういう時に呼べるやつっているのか?」
「フフフ。安心したまえ。僕を誰だと思ってるんだい?」
「粗大ゴミに宝石を足さずに2で割ったような奴」
「……え、粗大ごみの半分の価値しかないの?」
遠慮しない秀星。
「……ま、まあ、とりあえず、電話してみるから、ちょっと待ってて」
ラターグがスマホを取り出して、どこかに電話をかけている。
「……あ、出る前に切られた」
おいおい。
「もう一回!」
……プツッ。
「なんで切るんだよ!」
「ていうかそこまで嫌いならブロックすると思うが、しないんだな」
「……粘れば行けるかな!」
「知らんよ」
もう一回かけてみる。
「……おっ!繋がった!」
『……何の用だ。ラターグ』
すごくめんどくさそうだが、声色は秀星とほぼ変わらないような気がする。
「実はね。すごく面倒なことの手伝いをしてほしいんだよ!」
『舐めてんのかお前は』
「実は舐めてないんです!」
『だろうな』
「具体的にはボディーガードをやってほしいんだ!すごく面倒な作業をするんだけど、それに対して邪魔が入るんだよ。そいつをどうにかしてほしいんだ!」
『……はぁ、わかったわかった。すぐにお前んち行くから待ってろ』
電話終了。
「ねっ!何とかなったでしょ!」
「ラターグって……周りに恵まれてるよな」
友達を作るのが上手い奴は違うな。




