第十一話 忘れられたら良かったのに
真理愛──
高校でも、大学でも、がっくんを忘れて他の男の人と付き合っちゃえばよかった。
全部忘れて、新しい恋して、だってそれが普通じゃん。
元カレとか今カレとか、普通にいて。
古い恋は忘れて、新しい恋をして、それがだめでもまた次の恋を探しているじゃん。
あ~あ、私も時間を無駄にしたなぁ。
がっくんさえ居なければ……こんなこと考えなかったのに……なぁ……。
ぽたぽたと顔を水滴が流れる。
息が苦しい。
忘れられるわけない。
新しい恋なんかできるわけない。
だって、まだがっくんが好きだから。
好きな気持ちが消えてくれないから。
もう彼には結婚するお似合いの彼女がいるんだよ。でも知らない。
きっと私と違って幸せに愛し合っているんだよ。でも知らない。
もう私が彼の隣を歩くことなんて、一生有り得ないんだよ。でも……知らない。
諦められないんだ。諦められないんだよぉ……。
そんな私に……親友が無理やり作ってくれた奇跡の時間。
私に勝利の女神が微笑んだ……でも、もう二度と、がっくんとは顔を合わせられない……。
私はこのまま認知されない子供を産む。
どこまでも自分勝手な私はあの頃から成長できてないことを知ったから。
がっくんは、がっくんとして幸せになってもらうから……。
ごめんね。そしてありがとう。さようなら……がっくん……。




