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幼馴染が急に距離を置き始めたので、少林寺拳法始めてみました  作者: 10kg痩せたい
幼馴染篇

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第八話 秘密

真理愛──


~9月2週目金曜日~


 がっくんと久しぶりに話そうとメッセージを送ってみた。


『ごめん、今日はバイトだから帰りが遅くなる』


 せっかく勇気を振り絞ったのに結果は残念だった。がっくんは夏休みからお爺ちゃんのお店でバイトさせてもらっていると聞いていて今日はその日ということだった。

 会えないのかぁって諦めそうになったけど、私はもう一通だけメッセージを送ってみた。


『久しぶりにお爺ちゃんのお店に行ってもいいかな?』


 私はドキドキして返事を待つ。既読がついてから、少しして返信が返ってきた。


『ああ、いいよ!俺は16時からだからそれ以降なら少し話せるよ』


 やった!嬉しくてその場で小さくガッツポーズをしてしまう。




 放課後になり、おじいちゃんのお店の近くの本屋さんで少し時間を潰してから、お店に向かった。

 ぴったり16時。久しぶりに来る喫茶ポアロのドアを開け、入るとそこには──ウェイターさんのベストとネクタイをして、髪をワックスで整えたカッコいい男子──がっくんが居た。


 自分の顔が赤くなってしまうのを感じた。


「いらっしゃいませ。暑かったか?こっちに座って冷たいもの飲もう」


 そう言ってがっくんは深く座れるスツールの席に案内してくれた。

 顔の赤さを暑さによるものと勘違いされてちょっとホッとする。


 でも、座ってすぐ目の前にがっくんがいて緊張してしまう。

 いつもは互いの家だから、ラフな格好で会うことが多かった。

 バイトの制服に身を包んでいるがっくんは新鮮で、いつもの幼馴染の彼ではない気がしたけど……。


「今日は内緒で俺が奢るから、なんでも好きなもの頼んでいいぞ」


 っと言って笑いかけてくれて、あぁがっくんだと安心することができた。


 私がメロンソーダをお願いすると、がっくんは秘密だぞってアイスクリームとチェリーを追加してくれた。

 私がいつもお爺ちゃんのお店に来るとクリームソーダを頼むのを覚えてくれていたんだって嬉しくなった。




 丁度暇な時間なのか、他のお客さんも少なくて、がっくんとたまにお爺ちゃんも混ざって楽しくおしゃべりすることが出来た。

 あっという間に1時間が経って、そろそろ帰ろうとした。


「がっくん、やっぱりお金払うよ」

 そう伝えたけど……口元に人差し指を立てウインクしてくるがっくん。


「幼馴染に良い格好させてくれ」

 と耳元で内緒話をするように囁かれた。


「そうだな、今度何かあった時にごちそうしてくれよ」

「うん!わかった」

 

 これでまた一緒に遊ぶ口実ができるよね。




 がっくんはまだバイトの時間があって送れないから「帰り道、気をつけて帰れよ」と見送られる。

 とても楽しい時間を過ごせた。また来ても……良いよね。




 帰り道の途中、メガネでポニーテールの女の子を見かけた。とても可愛くてどこかで見たような気がして目で追っていると……。


「北条さん……?」

 それはがっくんのクラスの北条さんだった。急に声をかけたからびっくりされてしまった。


「東雲さん?こんなところでどうしたの?」

「あのね、幼馴染の南雲くんがこの近くでバイトしていてね。そこに今日はお邪魔させてもらったの」


「そう……なんだ」

 朝の勉強中に挨拶したときのような表情をまたしている。なんだろう、私なにかやっちゃったかな……。


「北条さんはどうしたの?なにか用事?」

「私は……知り合いの家がこの近くで、そこに向かっていたの」


「そうなんだ!彼氏さん、とかかな!?」


 私が冗談のつもりで言ったその言葉に北条さんは大きく反応した。

 見るからに顔が暗くなって俯いてしまった。


「あ、あのごめんなさい!冗談のつもりで言ったの。あんまり仲良くないのにこういうこと言っちゃだめだよね」


 私は慌ててフォローを入れた。

 北条さんは「ごめんなさい」とだけ言って、私が来た方向に走って去ってしまった。


 中学の時に、たまにだけど空気が読めないって友達から言われることがあった。

 あの時はがっくんがフォローをしてくれて、その友達ともまた話せるように戻れたけれども……。

 私、北条さんにもやっぱり何かしちゃったんだろうな。

 今度、挨拶するときに出来れば聞いてみよう。


 そう決めて私は駅に向かってまた歩き始めた。





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