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幼馴染が急に距離を置き始めたので、少林寺拳法始めてみました  作者: 10kg痩せたい
蛇足篇

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第九話 転機

真理愛──


~大学3年冬~


 結局、がっくんとの関係は戻せないままだった。もうこのまま、がっくんとは離れ離れになっちゃうんだろうなって……。朝、起きたら胸がドクンドクンと早鐘を鳴らすことも少なくなかった。でも今更、話しかけることもできなくて。




 冷たい風が流れるキャンパスを一人で歩いていた……。

 誰かが走る音がする。

 考えても考えても、もう終わってしまったということだけしか考えつかなかった。

 誰かがこちらに向かって走る音がする。

 高1のあの時にしたあの選択が……間違いで、そして全ての終わりだったことを今更噛みしめる……。




 ガッと肩を掴まれた。ハァハァと息を整える男の声。誰?俯いて顔が見えないけど、知らない人。肌がざわつく……。


「真理愛、助けてくれ……っ」


 途端に視界が歪む。聞いたことのある声。聞きたくない声。そいつが顔を上げる……西片だ。

 下がろうとするのに、両方の肩を掴まれてしまう。


 助けてくれ!酷い施設に軟禁されているんだ。

 俺が悪かった。俺が馬鹿だった。

 これからは君に尽くすと約束する。


 何か喋っているけど脳が理解を拒んだ。

 ただ音が響くだけ。


 過去の恐怖が体を縛る。動けない。中田の時と同じ。誰も助けてくれない。恐怖が……体を動けなくした。




 西片がまだなにかを叫んでいるけど、視界の端の方で何かが動いた。




 ……ッパァン!という音がして、私の肩を掴む西片の腕が上方向に吹っ飛んだ。

 私も、西片も驚いて、そっちを見ようとすると……同時に西片がグルグル回りながら吹っ飛んでった……。




 理解できないまま、いつの間にか隣に居たその人を見てると、飛んでった西片の方に歩き出し、髪の毛を掴んで引きずっていった。


 聖奈ちゃんが慌てた感じで走ってきてくれた。


「大丈夫!真理愛!?」


 聖奈ちゃんの顔を見て、すとんと腰が抜けたのを理解した。


 ……がっくん。




聖奈──


 いや、おかしい。ここは科学を専攻する大学だ。物理学を無視することなんて有り得ない。


 真理愛が変な男に絡まれてるのが遠目で見て分かった。慌てて走り寄る間に、黒い影が間に入り込んだのを私の目も見た。


 次の瞬間にはぐるぐる回りながら男がふっとんでいった。


 げんりがわからん。

 た、たぶん蹴り?回るのも、飛ぶのもどういう力の作用なのか……。

 人類の未知の力か、ウゴゴゴゴ……。




 それにしても……私の角度的に丁度顔が見えた。めっちゃ怖い顔してた……あれって。……とそんな場合じゃない。真理愛に声をかける。


「大丈夫!真理愛!?」


 すとんと落ちるようにその場に座り込む真理愛。声をかけても、反応が薄かった。あの日みたいに……。声をかけても反応しないのに、急に立ち上がったと思ったらふらふらと自宅へ帰ろうとする真理愛。


「ちょちょちょ!あんた大丈夫なの!」

「だいじょうぶ」

「ケガとかは?」

「だいじょうぶ」


 生気の抜けた顔をしている。あの時と一緒だ。


「ちょっと待ちなさいよ!荷物だけ取ってくるから」


 急いでタクシーを呼んで、置いてきてしまった荷物をダッシュで取りに行き、急いで真理愛を家へ連れ帰ることにした……。




真理愛──


 聖奈ちゃんが呼んだタクシーに乗せられて家まで戻ってきた。がっくんと一瞬だけ目が合った……すごい怖い顔をしていた……。


 頭にあの時のことがフラッシュバックする。

 『ごめん、俺も勉強に集中しすぎてさ、今日は体調悪いんだ。お礼は別に気にしないで』

 馬鹿な私ががっくんに言い寄ったとき、あのときのがっくんの顔がどうしてか重なった……。


 あんなにやさしい人を裏切ったんだ


 こんな汚れた私を


 見ないでほしいっておもった


 もう離れなきゃだめだ


 でも……離れたくない……どうしたらいいのか……わからない




聖奈──


 家に真理愛を連れ帰ってくる。普通に立てるし、歩くことも出来る。ただ表情だけが抜け落ちてる。今はただ自分の部屋で座っているだけ……何もしてない……。


 大学のあの出来事。

 真理愛は南雲くんに助けられて喜ぶのかなって思ってたから、今の状態は明らかにおかしかった。どうしても高校1年の時の出来事が思い起こされる。


 お世話になってるカウンセリングの先生にも時間を作ってもらいたい……。でもまずは……今日あったことを時子に伝えた。


「……ということがあったのよ」

『そう』

「カウンセリングは受けさせるつもりで今メールだけは送った。あんたの方でもどうにかならない?」

『……』


 珍しくあの北条が黙ってしまう。


「しばらくは私が見るようにする。もうすぐ春休みだし……でもその後が……」


『今考えていることがあるの……絶対に間に合わせる。ごめんなさい、聖奈には負担をかけてしまうけどもう少しだけ彼女を支えてあげて貰えるかしら』

「それは全然問題ない。でもどうするつもり?」

『今最後の詰めを行っているところ、また連絡するわ(プツッ』

「あっ、ちょ!……も~~~~!」


 本当にあんた達は!説明が足らないのよ!2人とも!





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