第六話 いつだって私には
真理愛──
どうしても断れない飲み会に参加していた……。
今日は聖奈ちゃんもバイトでいない。出かけるときに一滴も飲むなと釘を刺された……。
大学に入ってもう2年……がっくんとも全然話せていなかった……。理由はわかってる。寝取り女……北条がいるからだ。
がっくんを見かけたらいつもその隣に北条が居た。話しかけたくても、いつも北条が私を睨んできていた……。
がっくんも……ナンパから救ってくれたこともあったけど……話しかけてはくれなかった……。
そして、学内で入ってくる北条の情報はさらに私の首を苦しくさせた。
若干20歳で北条グループの総裁に上り詰める才女。とか。
多数の会社の業績を向上させ、旧経営陣を追い出した。とか。
彼氏とはいつもラブラブ。とか。
彼氏とはいつもラブラブ。とか。
彼氏とはいつもラブラブ。とか。
……気づいたら私はお酒を飲んでいた。
誰かに……外に連れ出されたのを覚えている……。肩を貸されて……歩いていく。ぼーっとした頭でキラキラのネオンの下を歩いていく……。
ホテルって文字を見て、私は急に意識を取り戻す。
「やめて!」
肩を貸していた……チャラい男を突き飛ばす。
「いてぇ!お前ふざけんなよ!」
男が大きな声を出す。酔ってるせいだけじゃない。足がガクガク震えだす。私を見てチャラ男がニヤリと口の端をゆがめる。
「なぁケガしちまったぜ!詫びろよ!そこのホテルでさぁ!」
私が抵抗できないのを見ると調子に乗り始める男。逃げたくても、足が震えてる……それに酔っぱらってるせいかまっすぐ歩けない……誰か助けて……。
「おい」
別の誰かが声をかけてきて、チャラ男はびっくりしていた。
「お前、俺の女に何してんの?」
背が高くて筋肉質な男性がチャラ男に詰め寄る。助かった……。
「なんでもないです!」
そう言ってチャラ男は走って逃げて行った……。
でも運命は私を許してくれなかった。
「マリーちゃんじゃん」
助けてくれた男からそんな声が聞こえた。恐る恐る顔を上げると……そこにはコーキ、中田が居た……。
「助けなければ良かったわぁ!」
ガン!と路地のゴミ箱を蹴っ飛ばす。
音に驚いて私はビクッと体が縮こまる。助かったと思ったのに、どうしていいかわからない。昔の嫌な記憶が蘇る。
「お前達のせいであんな目にあったのにさぁ!楽しく飲み会ですかぁ!」
拾った棒切れでそこら中を叩いてまわる……。
ガンッガンッて音がする度に、空気が吸い込めなくなる。さっきよりも足が震えてる……。
「あぁ~……ストレス発散に付き合ってもらえばいっか」
中田が私を見下ろす。その目は、あの時と一緒の……。ガタガタと震えだす私の体。言う事を聞いてくれない。立つことも走って逃げることももう出来ない……。
「ホテル行こうぜ、マリーちゃん」
頭が、まっしろだ




