閑話 かも?
学──
「あのさ……妊娠した、カモ?」
ごくりと唾を飲む。少し前の作戦会議の時、ゴムが外れてしまったことがあった。慌てて二人でお風呂場へ行き、対処を行ったことが頭をよぎる。
「ちょっと、遅れていて、さ」
「お母さんとかもたまにずれることがあるって言うんだけど」
「妙にすっぱいものが美味しいなぁって思うことも、あってさ……」
「これ、買ってきたんだ」
妊娠検査薬。もう一度ごくりと唾を飲む。
ただ自分の中で答えは決まっていた。
「例えどんな結果が出ても俺が責任を取る。お義父さんとお義母さんにも俺が頭を下げる。時子のことも絶対不安にしないように俺が支える。だからまずは安心してほしい」
俺はまだ学生に過ぎない。責任という言葉の何と軽いことだろう。それでも時子の感じている不安はすぐにわかった。
だから俺が彼女に伝えるべきは……。
「もし子供が出来ていたら、俺と結婚してほしい……。いやもし出来ていなくても、俺と結婚してほしい」
「…………うん、こちらこそお願いします!」
「大丈夫でしたぁ……」
2人してその場で腰が抜けてしまった。覚悟は決めていたが……やはり2人とも不安はあったということだろう。
出来てはいなかったが事の顛末は両家の両親に報告した。
頭が割れんばかりの土下座!と思って本当に頭をぶつけたら流血してしまいお義父さんお義母さんには心配をかけた。
そして、両家の両親には、婚約をしたいという旨を伝え、若干の戸惑いはあったものの了承された。
夏休みにしていた分を含めて追加でバイトして、婚約指輪を買った。
改めてプロポーズして、彼女の左手薬指に指輪を通した。
場所は彼氏彼女になったあの別荘で。
彼女は微笑みながら受け入れてくれた。
「絶対に、幸せにするから」
「ううん、だめ。」
断られてびっくりしてしまう!
時子はそんな俺を見て、にっこりと笑顔を作って……。
「私も学を幸せにして、それで家族全員幸せになるんだから」
「ああ、そうだね」
2人で笑顔になって、キスをした。
この約束が永遠となるように。
「ねぇ学……私の我侭聞いてよね?」




