第三十一話 私刑
聖奈──
~春休み 始業式前~
私の家に帰ってくると、まだ泣いてる……。
終わった話でまだ泣いている。もう4月になったぞ。なんで私に相談しないで、裏切った馬鹿どもの話を信じちゃうかな。
フランクに誘えばOK?ちょっとくらいビッチな女の子の方が男の子受けが良い?何処に信じる要素があるのよ……。
私が『仕込み』をしている間に、真理愛は盛大な自爆を行っていた……。私に相談しなさいって何度も言ったのに……。
『あんた、それ本当に言ったの!?そんなわけないじゃ無い!』
私は吐き出してしまった言葉を思い出して溜息をつく。
真理愛は、その瞬間泣き崩れてしまう。私も自分の発言を後悔する。言うべきじゃなかった……でももう遅い。
そして、告白。
成功するわけないよね、だって南雲くんは北条と付き合っているんだから……。
それから毎日私の家に来てはベッドを占拠して泣いている。
「こんな馬鹿な幼馴染いやだよね、汚れててごめんね、がっくん……」
じゃないよ。本当に……。
まず私そのがっくんとほとんど話したことないから、わからないし。フォローできないし……。
暗くした部屋で幼馴染の写真をずっと見つめて「がっくん……なんで?……なんで?」って、自分の部屋でやれ……。
「髪も……戻したのに……」
春休み前、染めていた髪を戻したけど、その幼馴染くんは「戻したんだな」と言われただけだったという。いや知らんがなだろ、それは。
「だってがっくんも北条に遊ばれてるって……言ってたもん」
消えたあいつらが言ってたんでしょ?A組の子が言うには相当悲惨な目に合ってるって……なんかいやに具体的なこと言ってたんだよね……。
あいつらも西片と中田の仕込みだったって言ったじゃない。
「私ががっくんのことが一番好き……なんだよ……」
もうめんどくさいな……。
だからこれは蜘蛛の糸。地獄に落ちた可愛い真理愛ちゃんへ垂らしてあげる仏の慈悲って言う奴だ。
「……ねぇあんた泣いてるだけでいいの」
泣いたまま、こっちを見る真理愛。
「このままでいいの?遊ばれてポイ捨てされて、あいつらだけのうのうと道の真ん中を歩くの許していいの?」
捨てられた子犬みたい……。
「地獄に堕とそうよ。楽しいお祭り起こして……さ」
私はボタン1つで、『それ』をクラスのグループチャットに投下できるように準備する。
「生徒指導で呼ばれるかもな~停学になっちゃうかもな~、でもね。あいつらを地獄に堕とせるよ?どうす(ピッ」
「あ゛っ!」
真理愛のタップで『それ』が投下され、既読がどんどん増える……あっ……あっ……あっ……再生も増えている……も、もう知らなーい。
「あ、安心して一応匿名アカウント。もしバレても捕まるのは私だから……」
そう言いながら急いでアカウントを削除する。
「やだ、その時は私も捕まる」
ぎゅっと私に抱き着いてくる親友。
自分の正式なアカウントを使って2人でそのグループを見ていると、どんどんコメントが増えていった。
西片と中田の真の愛を祝福するコメントだ。
「ざまぁ」
それを見て泣きながら笑う真理愛。
「笑えんじゃん」
久しぶりに見た親友の笑顔に……ようやく安心することができたのだった。




