第二十七話 罰
ハル──
~2月4週目~
「俺が悪かった。時子がこんなに怒るなんて思わなかった。火遊びだったんだ!」
「は?」
親から呼び出され、時子との許嫁関係は破棄されたと言われた。
俺は何がなんだかわからなかった。あれだけ俺にべた惚れだった時子が!?なぜ急に!?
思い当たるのは、東雲真理愛の事だった。俺は遊ぶのに夢中で、時子をかまってやらなかった。べた惚れだからと、遊ばなくて拗ねてしまったのだろうと思って俺は急いでA組へ向かうことにした。
授業が終わる度にA組へ行くが何故か時子が捕まらなかった。歯噛みする。
昼休みも空振り、放課後になってようやく時子を捕まえた。思いつく限りの謝罪を行い、彼女に新しい関係の構築を申し出る。
「いやだからさ、今度こそ真剣に結婚に向けて付き合い初めてもいいんじゃないかって……」
「無理、私もう彼氏いるから」
「……え?」
「そもそも……お前のようなカスを相手にするわけないだろ」
「ど、どど、どういうこと?」
「どういうことも何も……全部お前の親に伝えて関係を解消済みって言ってるの」
パクパクと口を動かすが何も言葉が出なかった。
「もう他人だから話しかけないで」
「まままま待てよ!」
時子の手を捕まえようとすると、何かに腕が弾かれた……?
「大丈夫?」
「大丈夫だよ、学」
俺には見せたこともない顔で、えっとこいつ誰だっけ……男を見つめる時子。どういうことだよ……何も理解ができない……。
「待てよ時子!お前浮気してたの……カッ……」
時子を掴もうとした左腕の感覚が……ない……!折れて……いるッ!
「おい西片。火遊びって言ったか?」
髪の毛を掴まれ上に引っ張られる……っ。俺よりも背が低いのに、なんだこいつは!
「今、お前なんて言った?」
ブチブチと髪の毛の抜ける音がする……っ。
「学、そんな奴ほっておいて帰るわよ。……もう処理することは決めているから」
時子が何か言ったようだが、痛みでそれどころではなく聞き取れない。
あと少しで頭が引き千切られる!というところで、万力にでも掴まれていたような髪がようやく離される。
奴の手から、ごっそりと、お、俺の髪の毛がぁ……!
「もし次、言葉を間違えたらお前の命はないぞ」
こ、こんなモブ顔に!なんでだ!どうして!どうして……どうしてだ……どうしてこうなった……。
モブ顔に俺も見たことの無いような笑顔を向ける時子。
ね、寝取られているのは……そうか、俺だったのか……。




