第二十三話 絶望
時子──
~1月1週目~
新しく雇ったセキュリティの黒服から報告が上がってきた。
報告を見て、私は絶望する。
報告が上がってこなかった2か月の間に『男女の仲に進展している』と……遅かった……。
私が止めれば良かった?ううん、だめだ。
報告には2つの噂について書かれていた。
・北条時子が南雲学と付き合っているという噂。
・北条時子が南雲学を遊び相手にしているという噂。
そして、『C組』でだけ、後者の噂が撒かれていた。
東雲さんに話しかけた時のあの言葉が頭に響く……。
『あなたと話すことなんか何もない!!』
彼女を止めることは私にはできなかった。
別れてでも学に行ってもらっていたら……でもそうしたらパーティー会場で私は会社を取れず、両親の言いなりになり、どちらにしろ西片を止めることが出来なかった……。
私のせいだ。頭をかすめる。だめだ、『かもしれない』は意味がない。ここから絶対に、彼女も幸せにしてみせる……。
イライラを抑えて報告を読み進める。そもそもの噂の出所について書かれていた。
西片と中田とクラスの女子2名。中田自宅での行為について。
ぶちんと、何かがキレる音がした。
「2つ命令を出す。1つ、元監視達を痛めつけろ。2つ、すぐに動ける準備をしておけ」
黒服はすぐに走って出て行った。
動かせる黒服はまだ数名。少なすぎる。何をするにも手が足らない。早く人を揃えないと……。
~1月2週目火曜日~
セキュリティから報告が上がってくる。ん?どこかで見たことがある……クラスの噂好き女子さん!なんで?え、お爺様に勧誘された!?
「それよりも報告を」
「そ、そうね。お願いするわ」
「西片と東雲さんが別れました」
「……どういうこと?」
『男女の仲に進展している』と報告を受けたばかりだ。情報にタイムラグがあるとはいえ、その動きは予想できなかった。いや、良い方向に動いているともとれるのか?
「……」
噂好き女子さん……いや、影さんが俯いたまま黙ってしまう。
「どうしたの?……報告を」
目を上げるが、そこには迷いが感じられた。
「報告を行わせて頂きます」
影さんが俯いた理由を理解してしまった。
やはり西片はクズだ。殺処分も辞さない。中田も同類だ。殺処分も辞さない。
「殺すのは得策ではありません」
ガンっと自分の手をテーブルに叩きつける。何度も何度も、血が出ても関係ない。
「おやめください!」
影さんが体でそれを止める。
「誰か、早く来て!」
黒服が何人か入ってくる。でも私は泣くのも叩くのも止められなかった……。




